刃物でひとつひとつ、少しずつ傷を作るように、お前の中に俺を刻めたら良かったんだ。
そしたら多分、もう、何も必要無かった。
「う、」
体内で長時間蓄積された違和感が蝕むように、愛しさでは無く吐き気として込み上げた、咄嗟に口元と胸を手で抑えて踞った。「レッドさん」「っ、ん」シーツを俺に被せて肩を支えて立たせたルビーに苦笑い。「また、出さなかったんですか」「はは、まあ、ね」「手伝うので出しましょう」「やだ」「知りません。大体、お腹壊しますし、気持ち悪くなりますよ」「…わがま、ま」「どっちが」湿った風呂場とは何度も苦々しい記憶を共有した、ざああ、身体を暖めるお湯は何故か消毒臭い、はあ、なんか、すげえ疲れた。「力抜いて下さいね」「えー…」ああいやだなあ、ルビーなんて大嫌いだ。
ずるり。
感覚は遠退き意識は曖昧に、虚ろに歪んだ視界から透明な液体が流れる。ルビーの肩に口を押し付けて声を殺した、嗚咽も喘ぎ声も分からないままでいいよ。どうせお前みたいな子供には理解出来ないだろうし。ざくざく、慣れた行為を、いや無機質な作業を淡々と繰り返すルビーに苛立って、ひ弱そうな背中に爪を立てて強く引っ掻いた。「痛いです」「俺だって、痛いよ」体内から吐き出されて死んでいく意味の無い生の可能性が混ざり合って流れていく、そうして残ったものは、数える必要も無いほどの、

「ルビー、」
「なんですか」
「愛してるよ」
「僕も愛してるんで、だから処理はちゃんとやりましょうよ」

いっそ孕めれば良かったのに。

0825:意味合い、意味無い。
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