夜空に浮かんだ数多の小さな星達が静かに瞬く、そんな優しい夜だった。微かに開いたカーテンの隙間から零れる繊細な光を捉えて、レッドは笑った。ぎしり、と腰を下ろしたベッドが軋んだ音を立てる、白い空間を占領し、深い眠りに落ちた子供の頭をそっと撫でる。

子供、子供は無知で幼く純粋だ、一時の間違いで勢い付いた感情を、疑うことなく真っ直ぐ貫こうとする。自分の意思だけを信じて、間違っていないと、絶対的な過信をする。だから、尊敬と恋慕を、その似通った感情を、履き違える。
レッドはそう理解している。

だけど、そう、解っていながら。
あの日、ゴールドが泣きながら喚きながら必死に俺にすがり付いて、叫ぶ言葉を否定出来なかった、痛みが込められた切実な告白は、確かにレッドの心臓を動かした。
自分も大人に成りきれてない、その証明に、レッドはゴールドを抱き締めて頷いてしまった、後悔はしていない、けれど反省はした。奪うな、そんな在り来たりな警告音は、もう鳴らない。

頭を撫でた手はやがて頬へ、頬から首に、首から肩を滑り、ベッドに投げられた手へ移動した。瞳が揺らぐ、指先を掴んで上げた手の甲に唇を落とした。白くて細い指先は、あの日確かに自分を掴んで、これから不確かな未来を手探りで掴むのだろう。

幸せになって欲しい。
そう、ずっと、思っている。

俺自身の幸せはそれだけだ。
もしかしたら、これから先も共存して生けるかも知れない、けれどそんな不安定な可能性に、徐々に大人になっていく俺は期待しない。希望は信じたいけど、過度な期待は泣きたくなるだけだ。まあ、きっと、共存する関係を断ち切って、終わらせたとして、多分俺はあの日のお前みたいに情けなく泣いてしまうかも知れないけど、その頃には大人になっているから、そんな痛みにも耐えて見せるよ。寂しくて死にそうになっても、気付かれないよう、笑って見せるから。
だから、幸せになって、よ。

小さな星のように、そんな子供の優しく幸せな未来を。レッドは一人、ただ静かに願っている。
例え、その輝かしい未来に、俺と言う存在が、弾かれていても、例えば、その有り得る事実に酷く胸が泣くように痛んでも、それでも、願っている、祈っている、ずっとずっと、想って、いる。




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0808.
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