眠れない夜が続く。
意識は断片的に切れるのにずっと、覚めた思考が俺を苛むんだ。眠いなあ、欠伸をしてベッドに倒れ込んだ。瞼が重い、不規則な生活を繰り返して負担が積み重なった身体は内側から鈍い痛みを訴える。ずきりと腹の下辺りが疼く、手で痛む腹を抑えて目を瞑った。けれど目を閉じても眼球を焼くように零れる光が煩わしくて、空いた片方の腕で顔を覆う。眩しい、よ。眩しすぎる、俺にはそれが辛い。
じわりと浮かんだ意味を持たない涙が一滴、頬を伝って落ちていく。あーあ、一回でいいから、ぐっすり、死んだように眠ってみたいんだけど、な。
一人がこわいわけじゃ無いのに。




ザクザク、鼓膜を揺らす音が耳障りだ。付けたままのポケギアのラジオからは雑音がひたすらに流れている、手を伸ばしてラジオのスイッチを切った。ついでに切り替えた画面を操作して見慣れた番号を表示。ワンコール、だけ慣らしてポケギアを床に投げた。シーツを引っ張って小さく丸まる身体に巻き付けた。眠れない癖に、身体は睡眠の欲を求めてる、疲れた、な。嫌だよ、一人で眠れない、誰か。
「う、あ」
零れた断続的な呻き声を消すために手で抑えた、あ、嫌だ、期待するな、来るわけないだろ、泣くな、いいから黙れ自分。唇を噛んで強く目を瞑った、苦痛でしかない、誰か、助け、て。

出口が見当たらない。





「先輩、」
虚ろに歪む意識を浮上、優しく額を擽る指先に、笑いそうに、いいや無性に、泣きそうになった。なんでお前はさ、こういう時に限って傍に居てくれるんだよ。暖かすぎる、優しすぎる、眩しすぎて目が開けられない、よ。
「おやすみなさい」
頭を持ち上げられて少し固い膝の上に乗せられた、うっすらと重たい瞼を開けると緩やかに微笑む俺の、




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0806∴寝れない朝を閉じるヒーロー。
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