大事な友人だったから、彼の痛みの願いを、叶えてやりたかったんだ。ざくりと見えない透明な刃物が肌を抉るよう、風を切るように強く強く羽ばたくポケモンの背を優しく撫でた。星が綺麗だな、と彼が笑った。
繋いだ手が途切れそうだった、上を見上げ、満点の星とにらめっこ。溢れそうだ、落ちそうだ、星屑も涙も感情も、全て落下しそうだ。ずくりと生温い気温が肌を舐める、紛れるのは塩辛い酸素、ざりざりと砂が擦れる音を捉えて、視線を上から下に移動、ようやく彼の願いを叶えてあげられる。
言葉は無く、ただ空気を吐き出す音だけが僕らの生存証明だった。絡めて強く握った指先をほどく、彼の肩に手を乗せて、後は押すだけだ。後は、押す、だけ。震える指先は惨めと言うより哀れだった、彼の視線がずっと、最後まで、一連の動作も、微弱な変化も見逃さないと、忘れないと惜しむように僕を見据えていた。
ふと、彼の身体が後ろに傾き、揺らぐ。咄嗟に掴もうとした僕の手を弾いて、小さく唇を開いて僕の名前を呼んだ。虚しいほど、鼓膜に響いて鮮明に刻まれる。

「なあ、ルビー」

(供に落ちて。)
それは僕が言われたいと願った言葉だったけど彼の唇はそこまでは優しくは、無かった。君の笑顔は、随分と泣きそうだったのに、君の最後の告白は、残酷だね。
ゴールド。


お前を愛したかったの、

彼の切断的なその告白に僕は静かに泣いた。そうして緩やかな波にのまれて、あ。

ぶく、ぶくぶくり。

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0825 涙を逃れない星空が落下。
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