「食べたい」ふと、ぽつりと呟かれた彼の台詞を耳が捉えて脳が整理して口が意味を聞き返す前に、顎を些か乱暴に掴まれて頬にがぶりと噛み付かれた。弄っていたポケギアが手から滑り地面に落下してがしゃん、思考はショート寸前、電源を落としてもいいでしょうか。ポケギアじゃなくて思考回路の電源をぶち切りしたい。いやもちろん出来ないし、しないけど。

がぶがぶ。
歯を柔らかな頬に何度も突き立てて、味わうかのように時折生温い舌が頬を撫でていく。「ひ、」その感触に、思わず上擦った声が零れたことには触れないで欲しい。っていうか食べたいってなんですかレッドさん、僕別に美味しく無いですよ、お腹空いたんなら何か作るんでその行動の意味と理由をちょっとお願いします。がぶがぶ、痛みは無い甘噛みだけれど、擽ったいその感覚に身体が震えた。

「ごちそうさま、」
満足そうに微かに声は弾む。そうしてやっと頬は解放され、最後にちゅう、と強く吸われてからレッドさんは僕から離れた。
「なに、するんですか」
「美味しそうだったから」
頬を手で抑えて問い掛ける、羞恥を隠すために強く睨めば僕を見下ろす赤い瞳が細められた。唇の端を少しだけ歪めて不適に笑う、珍しい彼の笑顔に心臓が跳ねたことは内緒だ。落ちたポケギアを拾って唇を噛んだ、答えになってないし意味が分からない。あとその笑顔反則ですよ。

全く、レッドさんには叶わない。


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0730∵瑞々しい果実。
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