結構長いこと時間を共有してきたような気がする。ぱらりと机に重ねられた雑誌を一冊取ってページを捲った、自分の好みでは無い内容は、同居しているもう一人の趣味だろう。何がお手軽に美味しく出来る簡単レシピだ、お前は最近さらに新妻化してきて嬉しいような、何とも言えない複雑な気分だよ、家事レベルが着々と上がりすぎやしませんかね。

ことことり。
鍋を掻き混ぜる音がキッチンから聞こえる、日常化したそれを今更どうと思わないが、何故か微妙な違和感。当たり前すぎる事なのに、なんでだろ、妙に落ち着かない。
「レッド先輩ー、めしー!」
「あ、うん分かった」

暇潰しとして眺めていた雑誌を元に戻してリビングの方に向かう、食事が綺麗に並べられた席に着き、ほうと感嘆の息を溢した。
「煮魚だ、さっきから煮てたのこれかあ」
「たまにはチャレンジ精神も大事っすよ」
箸を渡されて向かいの席に座ったゴールドと手を合わせる。
「いただきます」
「いただきまーす」
早速、柔らかな匂いで鼻と腹を刺激する煮魚を一口。

「…おいしい」
「へへっ、そうっすか」
照れたように声が弾んだ、眉を下げて、口端を緩ませて、くしゃりと困ったように笑うゴールドに少しきゅんと来た。
あー、今の顔、かわいい。
言ってよかったなあと煮魚を箸で突きながらしみじみ実感、こんな何気無い一言で喜んでくれるなら毎日言ったっていい。なんならたまには俺が腕を奮ってご飯作ってもいい。
ゴールドが俺に喜んで欲しいって思って、色々な事を考えてチャレンジしてくれるように、俺だってゴールドに喜んで欲しいから。
ああ、何時からこんな思考が当たり前になったんだろうな、違和感が働かないくらい、さ。でも気付いたら、とっくに前から、日常に溶け込んじゃったんだよ、そういうもんなんだよ。多分、誰かと共存するって、こう言うことなんだろ。
ゴールドに何をしたら、一番喜んでくれるかな。

ああ、そうだ。
そろそろ結婚しようか、って言ってみようかな。
いいんじゃないかなこれ、前に同居しようって言ったら抱き着いて喜んでくれたし、いけそうだよな、むしろ吃驚しすぎてゴールド泣いちゃうんじゃないかな、ははっ、なんてね。


まあ、結構、本気で思ってるんだよ。
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110825 そろそろ潮時だ、結婚しよう。
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