なんて美味しそうなんだろうと喉が上下した。かたり、置かれたふたつの箸はただ沈黙を続けている、ああいや駄目だ駄目だ、頭を左右に揺らして無、視覚を閉じる。あのね、無機質に冷たく冷めて冷え切った今日の異物達がぼくの生命活動の欲を擽ってくるの、おかけでお腹はきゅうきゅうと潰されるような痛みを訴えてくるし、ぼくの前は空欄のままだった、そうそれでも、満たされない。埋まらない空白をぼくは待っている、いったいどれくらいたったんだろうね、待ったんだろうね、ぴかぴかきしきしひやひやフローリングの床を滑らない固まった足先はとうに感覚を失っている、血液を凍らせていまや、はや、ぼくの身体を完全に蝕み余った体温をも食すのだ、あたためしますか。チンしたらきっとあったかくはなるけど凍り漬けになったぼくの心臓はチンしても解凍出来ないと言うことを知って欲しい、冷凍保存されてはいないんだ、残念ながら甲斐甲斐しくて優しいぼくはさきほど鍋で煮られたようだった、うん残念無念。
ぱちりと閃いた電灯は帰りを告げたよう、どうやら少しうたたねをしていたみたい、身体がすっかり目の前の食材達と同じように冷めきっている。「ただ、いま」空欄を満たす彼の帰宅にぼくはわらう、すまなそうに落ちる影は彼の表情をさらにワントーン下げた、机の上に置かれていた白くかじかむぼくの手を握って分かち合う体温は生ぬるい、あなたの手は優しくも酷くあたたかいですね。良かった、じゃあチンよりも柔らかな弱火でじわじわと熱してくれたら嬉しいな、さあご飯にしましょうか、ずっと待ってたんですよ。「おかえりなさい」今から貴方と二人で晩御飯。


----
0731∴晩餐を待つ、ならば二人で存分に満たされろ。
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -