その場所には自分は必要無い、と知っていた。
グリーンは現実を直視する。
目を逸らさない、ただ見据えることだけが、見続けることだけが自分の役割だった。

口内に含んだ炭酸が舌を潰す、弾くような酸味は苦々しいだけで美味しいとは区別し難い、自分の好みでは無いようだ。空になった無機質な缶を放り投げる、綺麗な弧を描いて廃棄される箱の中に収まった。
ぐらりと、定まらない。知っているさ、確かな感情など、不安定な意思にただ揺らいで逝くだけだ。
ぐらぐらと、漂う。

切なく苦しく虚しく痛んで、それでもこの感情は確かに存在する、無かったことには出来ないのだ、例えグリーンがどれだけ成長しようとも、剥き出しの心臓が幼子のように怯え、泣き叫ぶから、だから。
彼女が俺みたいにならないように、と最後までこのふたつの眼球で、見届けるのだ。

(偽善と言うにはあまりにも綺麗でした。)
---


ならばせめて、と。
足場が崩れた。

匙で掬うように一欠片、抉るようにその言葉を選る、救いのために声をかけたのでは無い、侮蔑と嘲笑をかき混ぜて悲観を含んだ台詞を捧げるために、ルビーは否定をする。
「貴方は幸せになれませんよ」
知っていると笑ったその顔を殴りたくなった、複雑な内心がばきばきと崩壊、派手な音を軋ませ、こわれそう、だ。
妥協を探せ、君を納得させることが出来る、最善の逃げ道を捜せ。

「僕と逃げて欲しい、」

僕を救って欲しい、意味を込めた二重奏は響かない、ならばせめて、と僕のために弾き出した自己中な最低の答えは彼の微笑みによって掻き消されることになる。
「ごめんな」

破綻した綻びがずっと、ルビーを破壊し続ける。

きみがすきでした、というにはどうしても、僕は。


(言葉が足りずに、子供になりきれなかった。)
---

(初恋は叶わないらしい。)

誰かが言った言葉はすとん、ことん、静かな音を二回程立てて、小さな胸の内に収まった。
初恋は、叶わないらしい。

そう、それでも、イエローが泣かずに前を見据え続けるのは。
必ずあの彼の、ふたつの真っ直ぐな眼球が、ぼくの最期を、見届けてくれるから。
だからぼくは、何度でも立ち上がれる。

(終わりはもうすぐそこに。)
---


ノイズ。

がりがり、脳を引っ掻くような雑音が、まともな意識を奪う。足を踏み外すことが、どうしても俺には出来ず、せめての解決策、踞って耳を塞ぐことで世界を遮断、必死に俺の意思を保った。
幼い心が、堪えきれないよと、絶えず悲鳴を上げるから、壊してしまいたかった。
うるさい、だまれ。
噛み締めた歯の間から嗚咽が零れ落ちた、誰にも聞かれることなく、それは空中へ霧散、虚しいだけだった。

言わないように、
証明。
そう、それこそが。
果てない、彼への愛情が愚かである、と。
それでも、ゴールドは思い続ける。

(何も言わないし、聞きたくない、)
---

レッドは総ての現状を理解した上で、選択を好む。
いや、あるいは元々、答えしか無かった。

喪失、彼らが、彼女が亡くした物を踏み締めて、ただ走る。亡くした痛みを知っている、誰よりも思考していたから他人の痛みに敏感だった。
それぞれ、痛みを抱え生きていく、選んだ答えから誰も逃げない。

知っている、理解している。見続ける強さを、大人びた意識も、立ち上がる勇気を、隠し続ける、無垢な弱さを。
だから、終わらせて、始めるために伝えるのだ。

そう、それこそが。
果てなき、君への愚かな純愛である、と。
レッドは想いを告げる。

(レッドはゴールドに、ゴールドはレッドに、グリーンはイエローに、イエローはグリーンに、ルビーはただ続けるために、最後まで綴る。)
-----
ごちゃごちゃ詰め合わせて紡ぎ合わせて継ぎ接ぎ会わせたものでしかない。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -