無邪気な子ほど可愛いものはないんじゃねーの、眠気でぼんやりと膜がかかったような頭でふと思った。
俺の隣で呑気に鼻歌なんて口ずさみながら楽しそうに笑うゴールドは多分、ちょう、っていうかジョウト一っていうか世界一っていうか宇宙一っていうかスーパーデラックスウルトラハイパーマスター並みに可愛いいんじゃないの、なんなの、なんなわけ。ちょうねむいんだけど、なんなわけ。
「ゴールド」
「なんすか」
「おまえ今日もちょうかわいい」
とりあえず言葉に出しとけと働かない脳で思考した、するりと喉から零れた台詞はあまりにもあっさりとしていて、言われたゴールドは、ぱちくりと目を数回瞬かせた。
「……先輩、」
「うん」
くあ、空気が情けなく抜けた声を漏らして大きく欠伸をした、先ほどゴールドに買って貰った缶コーヒーはもうとっくに空だった。
「先輩、朝早く、わざわざ起こして、すいませんでし、た」
「うん?」
「だってなんか先輩すげえ寝惚けてる」
「ううう、ん?」
「だってなんか先輩すげえなんか、可笑しい」
「オイコラ」
人が素直な称賛を口に出しただけなのになんだその言いぐさは。残念だけどさっきのこっぱずかしい台詞を言った時点で羞恥で頭と目、覚醒したんだからな!
少しムッとしながらも空の缶を近くに合ったゴミ箱に荒々しく突っ込んだ、視線を戻してゴールドを見やれば、……う、わ。
うっわ。
「顔真っ赤」
指摘した瞬間、自覚も同時に行ったらしい俺の脳内が勝手に、体温の上昇やら心臓の不規則な動悸やらを無断で弄りやがったらしく、なんというか、こちらとしても顔が熱くなるのを感じて、うっわ、うわ。
「レッド先輩も顔真っ赤っすけど」
「うるせえ」
手首を掴んで早足で歩き出した、これなら顔を見られずに済むし、にやけそうな不格好な口元だって分からない。
なんていうか。
わざわざ朝早く起こされたことや、心配をかける行動すら、こいつのかわいい顔で全部許してやれそうな気分になっただなんて、やはり俺は無邪気なかわいい後輩には甘いようだ。
もちろん、言わずとも、ゴールド限定で。
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∴無邪気の定義はお前自信だ。