いつかさよならの日まで | ナノ





「愛が溢れる限りは、ずっと傍に居ようかな」

いつか俺に先輩が何気無く呟いた一言。多分、それに深い意味は無かったんだと思う。
けれど、その一言だけで、離れても、またいつかその赤い目を見据えて、真っ直ぐに笑い返せそうだと錯覚する程に、あんただけを想って、一人だけでも進んで行けそうなくらい、嬉しかっただなんて。
一生、教えてやらねーよ。

「ふあ、…んーおはよーゴールド」
「うー…、はよーっす」
起床の挨拶を交わして身体を起こした、ごしごしと目を手で擦って大きな欠伸を溢した、移ったのか、先輩が二度目の欠伸をして薄く目を開いた、細められた赤い目がゆっくりと回りを見渡す。
同じ朝を迎えるのが当たり前になる日が来るのだろうか、ふと馬鹿で幼い思考をした。下らねえそれを鼻で笑って、ベッドから降りようと床に素足を着いた。

「ああ、そうだ」
ぐい、と手首と肩を掴まれ身体が後ろへ倒れる、自由な手で咄嗟にベッドのふちを掴んで転倒は免れる、ベッドに深く腰を沈めた俺の上半身を無理矢理引っ張って俺の耳元に後ろから唇を寄せ、弾んだ口調でレッド先輩は俺に愛を捧げた。

「ゴールド、手放す気なんて、全然無いから、これからも宜しくね」

せめて、幸せになろうか。振り向いた俺に続けて言った告白を噛み締めて、俺は何故か無性に泣きそうになったから、寝癖で乱れたその頭をさらにぐしゃぐしゃと掻き回した。
もしかしたら、だけどな、いつか俺の内心でひた隠しにした決意の感情をあんたに、いつか、伝える日が来るかも知れないけど、俺はこの、ふわふわで、おぼろげでうやむやで、曖昧で、それでも確かに存在していた、この恋慕を確定した証明として、墓まで持っていく勢いで黙っているつもりだから、ちょっと難しいかもな。まあ、そうっすね、来年の誕生日も一緒に過ごせたなら、少しだけなら教えてやるよ、俺は先輩みたいに意地悪じゃねーんで。
「あーはいはいよろしく?とりあえず昨日約束した通り、今日一日、先輩の時間頂きますからね」
顔を見合わせて二人で笑った。ああ、幸せだよ、すっげえさ、なんなら、泣けそうなくらい。


それだけで、生きていける。

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▽ 7/22 ??:??