おやすみ、続きは来世で | ナノ





今日の7月21日を、とても良い日で、幸せだったと俺は断言出来る。花を床に散らばして、イエロー先輩から貰った麦わら帽子を引き摺りながら楽しそうに被り、走り回るピチュを掴まえて頭を撫でた、似合う似合う、かわいーぜ、ピチュ。
ベッドの上に置いてたボールを宙に投げた、独特な音を放ち、ボールが開かれる。中から現れたバクたろうに全力で抱き着いた。俺とバクたろうの間に挟まれたピチュが小さく鳴いたが仕方ないだろ、たまらねえんだよこの、モフッマフッバフッ、な、身体がたまらねえんだ、お前ほんともふまふばふな毛並みしてるよな。
ぎゅううと抱き返してくれるバクたろうが可愛い、ほんと幸せすぎる。あ、そういやあバクたろうに誕生日ってあんのかな、有るだろうけど分かるか?まあいいや分かんなかったらこいつと初めて会った日にしよう、そしたらバクたろうも祝ってやれる。
「いてっ、」
ぱちぱちと微弱な静電気で息苦しさを抗議したピチュを、バクたろうから離れることで解放してやる。あー悪かった悪かった、怒んな怒んな、ほら落ちた帽子、やっぱり似合うぜ。
「お前の誕生日も祝ってやるからな」
今日でゆるゆるになった頬の表情筋がにへらとした締まりの無い顔を作る、ピチュが嬉しそうに鳴いて、眠いのか、とろんとした目付きで俺の服を引っ張った。
タオルケットを取って床に寝そべるバクたろうに身体を預けた、嫌がる素振りも無く当たり前だと鼻を鳴らす、俺の腹の上で丸まったピチュが目を閉じた。今日も、もう終わる。
散らばった花は綺麗だしこのままでいいや、明日なんとかしよう、エーたろうが素早く電気のスイッチを消した。
良い日だった、幸せだったな。

「おやすみ、」

反響しない俺の声とか、馬鹿な感情とか、全部全部、夜に掻き消されてしまえ。

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▽ 7/21 23:11 おやすみなさい。