星蝕 | ナノ





電話で呼び出した張本人であるクリスの隣で、俺以上に顔を真っ赤にしているシルバーのシュールさと言ったら、笑わずにいられるか!

「クラッカーやったことなかったとか腹痛い」
「使用法が分からなかっただけだ!」
「ぶ、シルシルちゃんかわいいかわいい。もしかして今日の夜も真っ赤だったり?」
「うるさい黙れ!」
調子乗って茶化してたらシルバーが拳を握って振り上げた、よっしゃあきたなこいよ!と内心で呟いて身構えたが、ぐっと握られた拳は一度震えただけで、向けられることは無く、静かに下ろされた。
「あ?」
「……お前ごときを殴ったら勿体無いだろう、手が」
顔を逸らされて、数秒の沈黙の後に呟かれた台詞が、嘘だってことくらい分かるぜ?シルバーはかわいいもんなあ?誕生日である俺に今日くらい、優しくしようとでも思ったんだろばーか、……調子狂うなあ。

「二人とも煩いわよ」
クリスが呆れたように溜め息を吐いた。毎度毎度のことにもう注意する気力すら起きないらしい、白いレースのリボンが結ばれた、大きなバスケットを開く。シルバーと共にその中身を覗けばそれはそれは美味しそうなサンドイッチや彩り豊かな野菜、弁当には定番的で育ち盛りには嬉しい唐揚げや海老フライにタコ型ウィンナーなど、さらには綺麗に切り分けられた季節を象徴する旬の果物、思わず簡単の息が出た。
「おお…」
「凄いな」
シルバーの素直な賛辞に頷けばクリスが柔らかく微笑んだ。
「折角だから作ってきたの、良かったら食べて?」
博士達にも、と腕に下げていたもうひとつのバスケットを渡す。ウツギ博士が満面の笑みでお礼を送る、うおお…クリスが作ってきたの、か。
爪楊枝で刺された卵焼きを摘まんで口に含んだ、ふわりと広がる甘さと程好い焼き加減、うん、うまい。
「クリス」
「うん?」
「お前良い嫁になれんぞ」
むしろ嫁に来いと冗談で呟けば隣で静かにサンドイッチを咀嚼していたシルバーから拳が飛んできた、踞り痛みに呻く、てめえ今日俺誕生日だぞ!つーか冗談、って、お前食うの早いな!あ、まてまてまて俺も食うから!まてって言ってんだろうが!

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▽ 7/21 13:02 間を取って二人とも嫁に来いよ!