産まれた手 | ナノ





貴方がこの世界に産まれたその日に、小さなその手が誰かを孵すだなんて、この日まで、考えたこと無かったの。
フライパンの上で軽快に踊る食材を視線で追いながら相槌として俺は頷いた、香ばしいにおいが嗅覚を刺激して腹が鳴った。
それに気付いた母さんが火を止めて振り向いた。その身体だって、成長した俺には小さく見えるけども、俺を孵した時に抱き締めた手の力強さは、きっと未だに変わらないままだ。

「おはようゴールド、それとね、おめでとう」
「サンキュー、母さん。あとグッモーニン」

前髪、また爆発してるわよと微笑む母さんに、何度も何度も繰り返して使い古した、それでも色褪せない台詞を返すために俺は歯を見せて笑った。
「これがはやってんの」

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▽ 7/21 8:52 ただただ、感謝を。