最愛の言葉を贈るのは。
けしてお前では無く、レッドは頭を愉快に揺らして否定を掲げる。
好きだと在り来たりな台詞を紡ぐ必要は無い、吐くのは奴一人の独白である。感情を含めずに淡々と零れる言葉は、多分、何かに似ている、多分。
「優しさなんて、欲しかった?」
欲しがる指先を食んだ、強く噛めば頭を掴まれて離される、レッドの指先を唾液混じりの血液が汚す。綺麗なものを汚すことに、躊躇いは無いけれど、汚いものを汚すことには酷く、抵抗があった、自分が汚れるようで、受け付けたくない気がした。
さて、血に汚れたこいつは前者だろうか、後者だったのか、俺は自問自答を笑う。
「優しさなど、お前には皆無だろう」
「グリーンにも、一切無いよね」
酷い人間だと、自虐的に笑う。笑う、笑うだけだ、つまらなくとも顔の皮膚が可笑しそうに震えるもんだから、笑顔、ああつまらない。
傷口から血液がだらだらり、流れるそれを舐め取る事もせず、俺の頬にレッドは触れる。
「愛してない」
「奇遇だな、俺もだ」
触れ合った唇の体温すら煩わしいと言うのに、重ねるのは何故か。
答えなんか探す必要無い。
「お前なんか大嫌いだ」
その言葉を吐き捨てたのは、どちらだったのだろうか。
ああ、今さらだがぽたぽたと零れた血液は奴の独白に相似していると、凝固した傷口を見て漸く気付いた、どうでもいい、けれど。
愛なんて存在して無かった。
(微弱の愛を葬る。)
▼ 死骸を抱く。