(独占したい、この手で繋いでおきたい、誰にも見せたくない、俺だけのもの?)

どうやら、俺は自分が思うほど、ひとつものに対して執着心は無いようだった。
むしろ無頓着野郎と罵られた、現時点の状況。

「お前俺のこと好きじゃねーんだろ!うっせ!黙れこっち来んなばかあほつんでれ野郎!来たらぶっころすかんな!」
何も喋ってない。飛んでくる枕を避けて投げ付けられた小型時計を受け止め、叫ばれた言葉をただ聞いていた。状況を全くもって理解出来ていない、何故俺は貶されているのか、疑問が浮かぶ。
「大体人の一斉一代の大事な告白を分かった、だけで済ませんじゃねーよばか!」
十分なスピードと重量を伴った図鑑を両手で挟むようにキャッチ、なんという物を投げるんだお前は。欲しがるぞ、その辺の奴等が喉から手が出る程に欲しがるものだぞ。
「つーかなんでなんにも言わねえわけ!なに、なんなの、お前なんなの!デートしようっつたらホイホイノコノコ、ノコッチみてえに来るけどなんなわけあほ!」
ノコッチってなんだその例え、テンポ良く放り投げられるモンスターボールをひとつ残らず回収。ボールの中のポケモン達が子を心配する親の目で見つめている、安堵と疲労の意味を込めて溜め息を吐き出した。

「お前、俺のこと好きじゃ、ね、あいだっ!?」
手元に合ったモンスターボールをひとつ、ゴールドの顔に投げ当てた。すこーん、なんて生ぬるい音では無く、めちゃくちゃ痛そうな音がした。顔を手で覆って痛がるゴールドに近付き、肩を強く押して床に組み敷いた。盛大に背中を打ち付けて悲鳴を上げたゴールド、気にすることはない、俺だって言われっぱなしは頭に来る。

「なにがされたいんだ」
胸ぐらを掴んで顔を寄せた、戸惑う金の瞳を鋭く睨み付ければゆらゆら揺れて、痛みで涙が浮かんだままの目元に唇で触れた。
さあどうした、さっきまでの威勢は何処に消えた?

「なにが、されたいわけだ、お前は」
手を絡ませたい?
指を絡めて小さな手を強く握り締める。
唇同士を合わせたい?
噛み付くように荒々しくその唇を奪う。
身体を重ねたい?
胸元を掴んだ手を離してスボンの隙間から手を入れ、太股を撫でた。
「ひ、っおま、ちょ、シル、バー」
震える吐息を鼻で笑った、赤く染まった顔で睨まれる、全然怖くも何とも無いが。
「お前、まじ最悪すぎる」
「褒めるな」
「褒めてねえよ貶してんだよばか!」
ばかばかばか!空いている片方の手でぼすぼすと叩かれる、何故貶されているのか、こいつが望んだというのに。
「俺に興味ねーんだろこの無頓着野郎!」
「興味しかない」
ツンデレ、などと先程馬鹿にされたので素直に言葉を返せば俺を叩く手がぴたり、と停止。


顎に衝撃。

「おっ、おまっ、うわ、っえ、きもちわうわっ、きもちわりいっ!!!」


……こいつ泣かす、顎の痛み消えたら絶対に、泣かす。

※愛情表現の意思疏通にお互いにズレがあるようです。

(なんで素直になったらなったでアッパー食らわなきゃいけないんだ、お前が素直になれって言ったんだろうが!)

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残念などっちもどっち!
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