彼の服を掴んだ。なあに、疑問を無言で問い掛ける赤い瞳は、俺をただ無機質に見下ろした。「あの、」言葉は落ちた、何処に消えた、上に下に、沈み、意味を為さない。レッドさんは指をほどいて座り込む俺に合わせてしゃがんだ、除き込んで来るその真っ直ぐな視線が何だか無償に怖くて顔を伏せる。
「ゴールド」
頬に手を寄せられた、擦り付くように顔をぴとりと付けた。体温がじんわりと伝わる、同じように胸にじわりと何かが広がる。胸がざわざわと喧騒の波、溢れだしそう、だ。
「レッドさん」
欲しいよ、俺は貴方が欲しい。
なんて。
言えない、言わない、いけない。
伝えるべきでは無いのだ、自らの渇きを、無頓着で淡白な彼に訴えてはいけない。求めることに臆病になった、嫌われるのが怖かった、こんな俺を拒否されるのが、嫌だった。我が儘だった、彼に求めるなんてしちゃいけないんだと、思ってた、知ってた。
「……何でも、無いです」
へにゃりと、緩んだ顔で笑った。頬に触れていた指をそっと剥がした、笑え、笑うのだ、感傷など、干渉されなければこの感情はいずれ、緩衝、出来る筈なのだから。
「…馬鹿じゃないの」
顎を掴まれて唇の横に噛み付かれた、「っ、た」身体を引こうとしたが顎を掴まれていたので無駄だった。「ばればれ、」
唇を微かに緩ませて、とても綺麗に笑う。見透かされた感情、じわり、じわりと、涙が浮かんでぼろりと滴が溢れた。

「すき、だ」
「……知ってる」
触れあった唇が震えて、それでも嬉しかったから、泣きながら俺も笑った。ただ純粋に貴方が好きです、また知ってる、と唇を寄せたから仕返しと愛しさを込めて俺から噛み付いてやった。

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やさしいあいをしっているか。
 
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