先輩に叩き起こされ、慌ただしく起床。
眠い。


-----



鮮やかな夢を見た、ぼんやりと虚ろなままゴールドは呟く。
独白に似たその発言に俺は首を傾げる。ゴールドは焦らすように緩慢な動作でこんがりと焼けたトーストにマーマレードジャムを塗って、小さく一口かじる。そうして租借と共に思い出すように淡々と言葉を投げる。
あ、お前口に入ってる時に喋るなよ、行儀悪いだろ。

「先輩が焦げてました」
「…うんごめん、全く、理解出来ない」
「俺が引っ張りあげてました」
「通訳を頼みたい」
「先輩は、赤かったです」
がじりと、最後の人切れを口の中に放り投げて、ミルクが入ったコップに口を付ける、それっきりゴールドは黙ってしまった。俺は苦笑い、こいつ絶対まだ寝ぼけてんだろ。サラダに彩りとして添えたプチトマトにフォークを指した。

「…あんま、」
「ん?」
ごろごろ、球体の形を楽しむように口内で転がす、ぶつり、噛み締めれば、じわりと広がる酸味。
窓から射し込む朝日に目を細めて、何処か泣きそうな顔で、ゴールドは口を開いた。


「忘れないで下さいね」


-----



指先に残る、小さな痛みがこの胸を、確かに焦がす。


これでもかっ!…ってくらい苺ジャムをたーあっぷり、トーストにべったべった塗りたくって幸せそうに頬張る目の前の先輩に俺は笑った。
「垂らさないで下さいねー」
「んあー」
まあ、流石に塗りすぎたのかジャムが垂れる、指先を伝い落ちそうなジャムを慌てて舌で掬う。それでもかじった箇所からどろりとまたジャムが零れかけて、結局皿で受け止めた。
「塗りすぎっす」
「机にはこぼしてないない」
また、幸せそうに緩んだ顔で口を動かすもんだから可笑しくて可笑しくてしょうがない。
「先輩、すげえ朝から甘ったるい」
空のコップにミルクを注ぐ、白い液体をなんとなく見ていたら無性に色を付けたくなった。
先輩が皿にこぼした苺ジャムをスプーンで掬う、そうして液体と混ぜれば微かに色が変化する。
「なにしてんの」
「なんとなく?」
自らの行動に意味は無い、あえて理由があるなら、変な夢を見たからかもしれない、いや関係無いか。
「あ、パン一枚追加」
「はいはい、俺も食おっと」
素早くパンをトースターにセット、適当にボタンを押す、少したったら取ればいいだろ多分。
指に付着したジャムを舐め取ったレッド先輩は何故か不思議そうな、困ったような変な顔をした。
「あんさあ、ゴールド」
「苺ジャムのおかわりは無いです」
「いや違う違う。あのさ、良く分かんないけど、俺はゴールドのこと忘れないよ」
「……そっすか」

そうであれば、良い。
じりじりと焼ける音を捉えながら、薄く色が付いたミルクを飲み干した、そうして今朝見た夢を記憶の底に深く深く沈め、た。



(せめて今だけは、と。)
(確かに痛む胸に焦がしながら、不確かな存在に泣きながら、すがりつく。)


追記、パン焦げた。


------------
ネタノートでずっと放置してた奴を無理矢理完成させてみた。時間立ちすぎてオチをすっかり忘れてとりあえず夢オチっとこう→シリアスどうしよう→ギャグっぽいの混ぜとこう→意味わからん→もういいや、になりました。レッドさん甘党だったらいいですよね私が。
追記、書き終わった後に気付いたけどこいつらナチュラルに同棲してね、一緒に朝迎えてるんだけど、なんで。

 
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -