プリムラ・オブコニカ



欲しいものは、と問われた。
答えた、欲しいものは、無い。

「つまんねーの」
ごろんと草原に寝転がり、ゴールドはしけたァしけたァ、などどだるそうに呟く。
クリスは苦笑して、それでも考えた結果、無いものは無いのだからしょうがないと、誤魔化す。

「マジでなーんも無いわけ?」
「うーん…あえて言うならぼんぐりかなあ…」

買いたかった本は最近購入したし、そこまでお洒落に熱を入れている訳でも無い。ポケモンに関してのものなら一通り研究所に揃っている、だから、合ったら困らない程度の、ボールの材料を口にした。

「いつもと変わんねーじゃん。あーあつまんね、折角このゴールド様が買ってやるってんのに」
「自分の好きなの買えばいいじゃない。ギャンブルで儲けたお金に集るほど、困ってないわよ」

そーゆことじゃねーんだよ…。複雑そうに頭をがりがりと掻いた、首を傾げてクリスも草地に身体を預けた。困った顔でゴールドは見つめて来るから見つめ返したら目を剃らされた、クリスは視線を青空に戻して小さく笑った。
ゴールドが何を考えているかは分からないが、自分のために何かをしようとしてくれたことが、素直に嬉しかったのだ。
勿論、言うつもりなど無いけれど。

「クリス」
「ん、なあに?」

ゴールドの手が顔を覆うように近付いて、反射的に目を瞑った。そうして、擽るように触れた後、手を離して、ゴールドは楽しそうに嬉しそうに笑った。

「良く似合ってら」
「え、なに、なんなの?」

おそるおそる指先で触れられた場所を弄る、はらりと何かが落ちた。
白い花びら。触んなよ、落ちんだろ、ゴールドが髪に混じるように差された白い花を指で整える、胸がじわりと熱くなる、ばか、なによ、いきなり。

「あんさあ」
「なによ、」
「今度クリスが暇なとき、ぼんぐり集め一緒にやろうぜ」
「…うん、約束」
「おう、約束な」

お金がかからない、けれど有意義でもっともっと幸せなこと、絡めた指先と赤く染まった顔で二人は休日の予定を誓います。

(若き青春の美しさ!)




花言葉...プリムラ・オブコニカ:青春の美しさ








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