さて、それじゃあ呆気ない近況報告と言うか、事後報告でもしようか。

くるくると手の内でボールを回して、木に寄り掛かりながら一人内心で事前整理。
あの後、夜が開けて直ぐにクリスとシルバーに連絡を入れた、二人は慌てて来てくれた、ちょっとその慌てように笑った事は内緒だ。何をした、シルバーに睨まれたので拾った、と答えれば胡散臭そうに俺を見上げて、少しの間の後、盛大な舌打ちを頂いた。うーん先輩を敬う後輩が俺の回りに居なさすぎじゃないかな。それをシルバーに言えばバトル意外尊敬する場所何てありましたか、と鼻で笑われる。寛容な先輩は確かに、と茶化しといた。ハラハラと胃辺りを抑える隣に居たクリスには悪いことしたかもしれない。まあ、そんなこんなでゴールドの身柄をバトンタッチした訳だ。
後は律儀なクリスから電話で聞いた話だが、そんなに怪我は酷く無く、かすり傷、軽い打撲、足を挫いた程度なので問題も支障もあまり無し。後は俺が手当てした、ポケモンに切り裂かれた腹の傷さえ塞がれば退院出来るらしい。俺のせいかと勘違いをしたシルバーが照れ隠しに心配かけるな、と寝ているゴールドの首にチョップをかましたのは微笑ましい話だ。…むしろ目覚めて真っ先の一言が…とそこで躊躇ったようにクリスが口ごもった、問えば恐る恐るその一言を再現した。
「あの野郎ぶちころす」
爆笑した、元気バリバリじゃないか、腹を抱えてひいひい言いながら大きな声で笑った。まさかの俺の反応に戸惑うしっかりした後輩に報告のお礼と、俺の最近の状況をそれとなく教えといた。
「ひまーだーなあ」
そろそろだと思うんだけど、どう思う?ボールの中で丸まるそいつに問い掛ければ知らん顔された、ひでえ、まあこいつの持ち主より可愛いけど、うん可愛いから許す。

「返して、頂けます?」
だるそうな敬語、顔を上げれば松葉杖を付いて絆創膏や湿布、包帯を、貼って巻いた、このボールの持ち主。ようやく、か。唇だけで薄く笑った、「俺の相棒なんで」自由な片手を差し伸べて、無愛想に俺に乞う。
「一人で来れたんだ、退院おめでと。もうちょっと入院してたら良かったのに」
「ああ有り難う御座いますごってーねいに?いやあ可愛い俺の相棒が最悪な性格の誘拐犯に拐われましていてもたってもいられなくて」
「へえ、大変だねえおちおち寝てらんねーじゃんか。それでそんなことよりぼろぼろで貧弱なゴールド君は俺に言うことがあるんじゃないかなあ?分かんないとか言ったらちなみにもれなく張った押す」
「怪我人に考慮と言う言葉をご存知っすかあんた、もれなく殴ってその空っぽな記憶に植え付けてやりましょうか、ちょっと最近身体鈍ってまして丁度い」「誤魔化すなよ」
面面と淀み無く続く言葉を遮った、ボールを持ち直してゴールドの側に歩み寄った。ゴールドは何も言わず、真っ直ぐに俺を見据えていた。良かった、来てくれて、事前整理で正しくなったし、クリスに近況報告、もとい俺の居場所教えといたのが無駄にならずにすんだ。
「はい」
「…うす」
小さくひ弱そうな手のひらにバクフーンが入ったボールを手渡す、そっと受け取って何も言わず数秒間、見詰めてポケットにしまった。ああそういえば、こんな至近距離で殴り合わずに会話するなんて初めてじゃないかな。初対面の時も距離を置いて話してたらゴールドが確か俺を殴ろうとしてきたし、それからも同じ空間、場所、位置に居れば殴りかかってきたしなあ。
「俺さあ、」
「はあ」
「いまんとこちょっかいは出しても、先に手は上げたこと無いんだけど、気付いた?」
「……さっき、一応」
おお気付いてたんだ、まあ殴られかけたら手や足を躊躇無く出してっから、しかも俺の方が結構殴ってるから別にどうということもこれまた、無いんだけど。

「レッド、先輩」
「うえ?」
あれ、俺初めて名前呼ばれたんじゃないかなこれ。松葉杖を使用してない片腕を上げて、俺の頬に指先で優しく触れた。ちょっ、ちょっちょっちょいちょいちょいまって展開急じゃない待った待った俺付いていけてないよ、おいおいとうとうデレ到来?
目を丸くしてゴールドを見下ろす、無表情、は代わり無いんだけど、なんか、目に、孕んでる、ような。金色の瞳に含んだそれ、はとても馴染み深い、えーっと、あれ?
俺意外に動揺しまくりじゃないの。


くたばれバイオレンス

さて、暴力のラストスパートといこうか!
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