ああそういえば。
「呼吸するのって苦しいですね」
盛大に咳き込んだルビーの背中を擦ってやる、苦しそうに荒い息を浅く吐き出すその作業的な行為を俺はただ見守っていた。
「苦しいか?」
「いまは、そんなに」
からからと渇いた声で笑い声を上げた、俺を指差し可笑しそうに小さく微笑む。
「先輩、心配しすぎだって」
「ん、?」
コップに注がれた水を勢い良く飲み干して、ばたりと質素なソファーに倒れる。その際にずれた毛布をかけ直し、絞ったタオルを額に置いた。俺に出来る事は、もう、無い。
「先輩、ゴールド先輩」
「なんだよ、?」
「屈んで、耳貸して」
言われた通りに頭を垂れて耳を近付ければぬるり、と熱を含んだ息と確かな熱を持った物体が耳を掠めた。
「うわっ」
「へへ、先輩…」
ぎゅっと俺の指先を掴んでルビーは顔を赤くして、ゆるやかに囁く。

「風邪治ったらいっぱいちゅーとかしましょうねえ」

君と居ると常に酸素不足だけど君が居なきゃ僕は息も出来ないんだよ。
(甲斐甲斐しく世話してた俺が馬鹿みたい!)




→これゴールビでも多分良かったとか言わない。
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