酷く、大人びた思考を、するのだな、と漸く気付いたよ。

小さな頃は無限の可能性に世界は満ちていて、自分に出来ないことは無い、と一度は誰でも過信する筈だ。そうじゃないと気付くのは余程現実に裏切られたか、大人になったか、だ。この量の手には何も掴めない、空を切って、虚無感に溢れて虚無に包まれ、ただ虚しさばかりをかき集めた、無情な結果のみである。だから、何が欲しくても仕方無い、と笑って諦める事を覚えた。
「せんぱい、どうしたの。」
俺の服を掴んで、見上げて来る彼は小さかった。身長差は頭ひとつぶんと、ちょっと、体格差は俺が力いっぱい抱き締めたら華奢な彼は折れそうなほど、彼は矮小な存在だった。いつからか、無条件で慕ってくるゴールドを守りたいと、欲しいと、気付いてしまった。気付いた瞬間俺は絶望した、何故叶わない思想を願う、切り捨てたかったのは大人の俺で、それでも子供の俺が泣き叫び、乞うのだ。
ゴールドが好きだ、欲しい。
俺のものに、なってよ、なんて馬鹿馬鹿しい、言える訳無いだろ、だから「なんでもないよ、」と、哀愁を滲ませ、けれど俺は笑ったんだ。
「…あっそ、ならいーや」
顔を俯かせ、何処かぎこちない口調でゴールドは言った、服を握り締めた指がそっと離され、た。
「あっ、」
つい、いやほんとについ。
その手を掴んでしまった、意表を付かれたゴールドが驚いて顔を上げた、その目が、微かに潤んで、いたから。
「好きだ、よ」
とか、言わないように重りを付けて、大人としての常識をぐるぐるに縛り上げたその感情が放たれてしまったんだ。そうして、身勝手な自分への罪悪感と、ゴールドの答えに対しての恐怖感に掴んだ手を離そうとしたら逆に強く、握られて、さ。お前が凄く、嬉しそうに。
「そんなことずっと前から知ってたっすよ!」
そんな嬉しいこと言うから!

力いっぱい抱き締めちゃったよ!
(そう、お前のが大人びた思考をしてた訳だ!)

- ナノ -