11/10/15 21:34 シルバーがゴールドに。 雰囲気だけ、 --- 強かで柔らかな雨音が耳を揺さぶる、流れていくその水滴が視界を酷く濁らせて、自害を彩るようにただ伝い落ちては色褪せていく。 錆びれた土で淀み、黒く染まった水溜まりを跳ねさせてゴールドは振り返った、赤みが失せた白く凍ったような指先で俺を指して、唇を歪めて呆れたように笑った。 「ここまでだよ、ばーか」 「主語を寄越せ」 「ばっかやろう、わざわざ言う必要も、今更ねーだろ?」 馬鹿馬鹿と鼓膜を叩く声色は突き刺すように淡々としている、水を吸い込んで滴る前髪をぐしゃりと顔から避けたゴールドがまた可笑しそうに口を歪めて、べ、と真っ赤な舌先を覗かせた。 「ばいばいシルちゃん、すきだったぜ、まあ結構、ダチとしてかなり」 「俺は、」 ざあああと雨足に掻き消された言葉は共に地面へ落下して、それでは意味が無いと同じ言葉を繰り返そうとしたら奴が首を横に振って明確な拒否を示した。 「それ以上は、言う必要、ねーよ」 ばか、とまた最後に付け足して、ゴールドは背中を向けて走り出す。遠くなる背中は瞬きを数回したらすぐに見えなくなってしまった。喉で胸で奥でつっかえたままの途切れた台詞を舌に乗せた。 「俺は、愛している」 言えない言葉は意味も形も訳も相手も失い、惨めに朽ちていく。はあ、と吐き出した吐息は白く、はあ、と零れ出た酸素は黒く変化して、ただ募るようにこの胸に維持されたまま、だ。 お前を、愛してる。 お前の世界の変動。 お前の正解の返答。 俺は、待って、いる。 お前の返事だけを、待っている。 1015/気安く吐かないで。 |