11/10/07 17:49 世界は限りなくおぞましいのだと、嘲笑う人を見た、世界の定義を比較する、自らの物差しの定規を人に突き刺す、酷い人を見た、たくさんの愚かな人を見た。こうはなりたくないと思った、こうなるしかないと、解った。 世界が痛い 正解が敗退 生が相対、どれも欠けていく。 俺に足りないものが分からない、どうしても前に先に次に進めない、愛は与えられなかった、愛は未知、そして出会いも未知、導きを示すものは俺の惨めな自尊心。 止まったら、生きていけなくなる。 前に進めないのに止まれもしない、逃げるように後退り、後退することで俺は自我を保つ。 声帯がどくりと震えて、咄嗟に沸き上がる衝動を抑えた、小さく呻いて擦り途切れた悲鳴を彼女が、クリスは拾う。 「…眠れないの?」 「問題ない」 未だに震え続ける喉に爪を立てて、強張る唇で固い言葉を返す。 ソファーでガーディを抱き締めて寝ていたはずのクリスが毛布を引き連れて俺のベッドに近寄る、それを手で制して首を横に降って拒否を示す。 困ったように下がる眉から目を反らして白いベッドに視線を落とす、衛生面を怠らないポケモンセンターのシーツにはシミひとつない、夜の帳には似つかわしくないほどの白、気持ち悪い、吐きそうだ。 「シルバー」 「問題ない」 「そうは見えないわ」 俯いて狭まった視界の端からそっと寄せられる白い手を拒めなかった、やがてその細い指先は喉を抑える俺自身手に触れる。 優しく剥がしてぎゅう、と俺の手を握ったクリスの指先は冷えていた。 「貴方の手すらもあたためられないほど、弱くてごめんね」 静寂に嗚咽のようにこぼれた言葉がじとりと俺の心臓に熱を灯す、そうしてクリスは言葉だけでは無く、静かに涙もこぼした。 「貴方のいたみが、わからなくて、ごめんなさい」 ぽたりぽたりと澄みきった青の瞳から落ちる液体は透明だ、白いはずのシーツにはクリスが汚した涙の後で黒に染まっていく。 その冷えた指先をあたためるように強く握り締めた、そう、そしたら、何故か。 何故だかいろんなものが、満たされた気分になったのだ。 10/07 きみのせかいはひどくやさしい、 ○きみのせいたい。 ×きみのせいだい、 |