mono | ナノ


11/09/30 18:56


ぼくだけが世界の真実/リハビリ
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酷く愚鈍でみっともなく、愚かな願いを祈った、我ながら幼稚で馬鹿だとは思ったけれど、でもきっとそうでもしなければ僕は奪うことでしか彼を求められなくなっていただろう。

「ゴールドさん」

さらりと眠る彼の前髪を優しく撫でて愛しい名前を呼んだ、敬うための付属品を二文字添付しても六文字、たった六文字の、名前。なのに、何故、この胸は満たされたように暖かい熱が灯るのか。

「ゴールドさん、すき」

長い前髪を整った顔からよけて露になった額に唇を落とした、熱を持った僕の温度は冷えた彼の額とは相対で、切なさを痛む胸に混ぜた。たどたどしく確かな愛を眠る彼に込めた僕は卑怯だった、奪うことでしか貴方を愛せなくなる僕はみじめだ、それでも求めてしまうのは、手に入らないから。

ほしい、

「貴方が欲しい」

願望が口に出せば出すほど胸に積もり、叶わないことだと実感すればするほど痛め付けられる事実と、反発する願望と現実は酷く夢見がちの子供を泣かす。
きゅうきゅうと涙を流す僕の心臓が彼をすきだと泣き叫ぶ、苦しくて苦しくて、僕は今すぐにでも奪ってしまいたくなる、すべてを。
頬を手で優しく挟んで呼吸を繰り返す柔らかな彼の唇をぺろりと一回舐めて、僕の唾液で湿った真っ赤な唇を塞いだ。

泣き叫ぶ心臓がぴたりと止んで溢れた愛しさで満たされる、すぐに唇を離して彼を確認、起きてない、良かった。

弱虫でごめんね、といつか貴方の前で泣きながら吐露する日が来るだろうか。そんな夢みたいな日が来たら、幸せになれるんだろうか、なれるん、だろうな。

あなたの世界が僕であればいい。

酷く愚鈍でみっともなく、愚かで下らない願いを祈って、汚ならしい僕の惨めな欲望を沈めた、そうしてまたひとつ、キスをした。


0930 弱虫のうじうじ。