11/11/09 20:29 「ジャーファルおにいさんは誰が何がどれが好きなんだい?」 「私は私を好んでくれている人を好いていて国民が優しくて暖かいこの国が好きで、この国の書物が好きです」 「つまりはこの国が好きでこの国以外は要らないんだね」 「いえ、そういうことでは」 「それじゃあアリババくんは僕が貰っていくね」 ぺたりぺたりと素足で音を鳴らして子供が床を軽快に歩く、隣で足音を殺して歩いていた筈の自分の靴と床が擦れる音が響いた、かつりかつりと二度靴が笑って、不意に足を止めた。子供も釣られるように数歩手前で立ち止まる、尻尾みたいに揺れる水編みが影を惑わす。 「ジャーファルおにいさん、」 「アラジン」 「そんな模範的な答えじゃ、正解は手に入らないことくらい、子供の僕だって分かるよ」 「正解です、か」 「子供は欲張りなんだ」 くるりと水編みを踊らせて振り返った子供の眼差しは眩しい程に澄んでいる、思わず目を反らせば揺らぐことない声が自分の名前を呼んだ。咄嗟に唇から零れ落ちたのはせめてもの抵抗を込めた、ある意味では解りきった問いだった。 「それではアラジンは、誰が、何が、どれが、好きなんですか」 「アリババくんが、アリババくんと見る世界が、アリババくんとモルさんと一緒にいることが、アリババくんが、一番」 「大好きだよ」 だから曖昧な感情で誤魔化すジャーファルおにいさんには譲れない、そう言って背を向けて走り出す子供の進む先を照らす日の光に目を閉じた。 あまりにも眩い。 1109/大正解 ---- シンジャにすればジャーファルさん分かりやすいんだろうなと思った。 白龍にしたかったけど最初の質問で躓いたからジャーファルさんになったっていう。 |