mono | ナノ


11/11/04 18:21

雰囲気だけ、
モルアリでもいい。
っていうかアリ(→)→←←←モル
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貴方の唇が静かに意味を孕むように。

「モルジアナは凄いなあ」
何処か得意気に目尻が柔らかく膨らんで、微かに赤らんだ顔で嬉しそうに貴方が喋ります。
「かっこいいなあ、俺もモルジアナみたいに壁をかけ上がってみたいよ」
「お望みでしたら抱えてかけ上がりましょうか」
「いやちょっとそれは男の面目として丸潰れだから、もうぺちゃんこすぎる感じだから」

両手を前で交差して拒否を示した彼に首を傾げた、今まで何度も抱えているのに、今さら照れる必要あるのかしら。まあ、年齢の割には彼の体重は一般的なものより随分と軽いから気恥ずかしいのかも知れない、けれど、アラジンのジンのような巨体でムキムキなアリババさんは何だか想像が出来なかった。

「凄いなあ」
「そうでしょうか」

誉められるたびにじりじりと焦がされつつある胸が、なんだか気持ち悪くてごまかすように座り込んだ地面の草を人差し指で弄る。
不思議だわ、不思議だわ。アリババさんと話していると、胸の奥が落ち着かないの、なんだか無性にざわざわと、くすぐったいの。
何故かしら、何故かしら。
「羨ましいなあ」
「……大丈夫ですよ、アリババさん」

アラジンのそばにいるとあったかい、アリババさんのそばにいるとくすぐったくて、もどかしいけれど、幸せな気持ちになれる。好きにしていいと、私の意思で行動していいと二人は教えてくれたから、だから私はここにいたい、ここにいる。

「アリババさんとアラジンが戦うなら私も貴方達のために力を奮いましょう。貴方達が困難な迷宮に進むならば私も共に行きましょう、貴方達が逃げたいと申すならこの腕で抱えて、この足で、壁を、全ての障害を越えてみせます」

これは絶対的な宣言。
いつかの別れに辿り着くまでの、長い道のりを三人で歩むための私の確定した意志。誰にも砕けやしないし、誰にも砕かせない。
だから、

「さらってあげましょうか、アリババさん」
「……男前すぎる発言ありがとうよ」

羨ましいなあ、と紡いだ貴方の唇が静かに孕んだ意味なら、とうに知っている。大丈夫、貴方に守られなくても、私は戦えるわ、貴方を守れるわ、無くしはしない。
無邪気に揺れる貴方の笑顔が、今では私を構成する大事な一部なのだから。

無くしはしない。

1104/ともに生きましょう。