赤い糸の終着点 3

「そうですよね。おかしいですよね……私たち、勝ったのに。」


悲しそうな表情を見ていたくなかった。
繭子の本当の気持ちが知りたい。

本当は生徒会に…幸人と一緒にいたかったの?


「……何?無理してるのバレバレだから。ちゃんと理由を言って。」


僕は最後まで…彼女の言葉を聞けるのか?
何故か隣に立っている繭子が遠くに感じてもどかしかった。
精一杯の僕の言葉はちゃんと彼女に聞こえたようで繭子は僕からパレードに顔を向けて小さく口を開く。


「本当に何でもないんです……。ただ、少し寂しくて。」


繭子の言葉が僕の中に静かに入ってくる。
僕は一人焦っていた。この言葉だけじゃ、ちゃんとした理由になんてなってない。


「でも…考えてみれば、こんなに寂しいのは学園祭準備が楽しかったからなんですよね。」


再び向けられた繭子の顔はさっきとは違って苦笑に近い微笑みだった。
繭子が寂しいと思っていたのは生徒会に入れなかった事じゃなくて…Gフェスが好きだったから?
僕は……単純だと今日初めて思った。
さっきまでの大きな不安の塊が繭子の言葉一つでどんどん小さくなって消えていく。


「だから……それは、棗先輩のおかげなんです。」


その言葉はさっきのクイズ大会の時とかぶっていた。
繭子は僕と一緒にいる時に何度かこの言葉を口にする。
何かあるごとに僕のおかげだと…。
さっきもそうだったけど、彼女がこの言葉を口にするたびに心の中に違和感を覚える。

「大したことはしていない。相変わらず大げさだね。」

そう、僕は繭子におかげだと言われるような大きなことはしていないのだから…。
いつもの様にそれを否定すれば繭子は少しだけ困ったように笑った。


「私にとっては大したことなんです。先輩ありがとうございました。」


そう言って頭を下げた繭子。
繭子の放った言葉の意味。
それはつまり僕のおかげで学園祭準備が楽しくて…今、終わりに近づいてて寂しいってことになる。
こんなにも自分の都合の良い様に取っていいのだろうか…。



“クイズ大会だけど…勝てたら、後で言いたい事があるから……覚悟してて。”



学園祭が始まってすぐの事。
その言葉は僕自身に言った言葉でもあった。
覚悟するのは繭子じゃない、僕の方。
繭子の言葉に僕は繭子の手を握って歩き出していた。

それに戸惑いを見せる繭子。
それでも僕は覚悟したのだ…。

「な、棗先輩?」

繭子、僕も一緒だよ。
繭子のおかげで学園祭の準備は楽しかったし…今は繭子と一緒で寂しく感じてる。

でもそれだけで終わらせたくないんだ。

本当は最後に言おうと思ってたのに…もう……


「……限界。」


小さく出たその言葉は僕自身驚いていた。
自分にはもっと余裕があったはずでそうなるように生きてきたはずだった。

「あの……。」

「試合前に勝ったら話したい事があるって言ったでしょ?」


この想いを隠すつもりも偽るつもりもない。
君にまっすぐ…伝えたい!

「本当は全部終わってから言うつもりだったけど……今のでなんか耐えられなくなった。いいから付いてきて。」



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