赤い糸の終着点 2

「優勝を飾ったのは……再び学園祭実行委員チーム!チャンピオンの座を死守しましたー!」


司会者の声と共に僕たちに降り注がれる拍手と歓声。
少しだけ呆然としながら達成感がだんだんと溢れ出す。
これで繭子を生徒会に渡さなくて済む、そう思っただけで嬉しくて仕方がなかった。
隣に座る繭子に顔を向ければ僕同様、嬉しそうに涙を溜めている。


「やった……!棗先輩……!」

「繭子!」


そんな繭子の姿を見て気が付いたら力強く抱きしめていた。
皆の前とかそんなの関係ない。
ただ…ただ、繭子が僕の隣にいてくれてるそれだけが胸いっぱいに溢れだした。

一気に緊張から解き放たれた僕たち。
繭子も僕の背中に腕を回してくれた。
更に湧き上がる歓声。
普段の僕からは絶対に考えられない行動だ。
それだけ繭子のことを僕は…。


「やった……!やりましたね……!」


溢れてしまった繭子の涙が僕の制服に沁みを作っていった。
僕と同じように勝利を喜ぶ繭子が可愛くて愛しくて…。

「繭子……。」

「はい……?」

「よかった…。」

「はい……棗先輩のおかげです……。」


顔を覗き込みながら素直に感情を表せば繭子は僕のおかげだと言った。
僕のおかげ…?それは違う。


「違う。」

「えっ…?」

「僕と君の勝利だ。」


僕と君のところを少しだけ強めて言えば戸惑いを見せる繭子。
確かに勝負は僕と幸人の一騎打ちだったけど…。
隣にいるのが繭子じゃなかったら僕は…


「誰のために専門外の法学まで詰め込んできたと思ってるの?…繭子がいたから、勝とうと思ったんでしょ。」


いつもより近くにある繭子の瞳を覗き込んでまっすぐに伝える。
まだ戸惑いと恥ずかしさが漂う綺麗な瞳に吸い込まれそうになりながらもう一度口にする。


「僕らの勝利だ。」

「……はい。」





クイズ大会の後は繭子と再び野外ステージに来ていた。
そこでは最後の仮装パレードが行われており僕と繭子は少しだけ離れた所でそれを眺めていた。



“アンタを生徒会に入れる事は諦めていない。”



オレンジとダークブルーが混ざる空を照らすように輝いているパレードを見ながらふ、と幸人の言葉を思い出した。
幸人の性格だと本当に諦めてはいないのだろう…。
やっと…勝利して繭子を生徒会に入れなくて済むと思っていたのに…。
キュッと胸が苦しく感じて隣に立っている繭子に顔を向けた。
今ここに繭子がいる事に意味があるのだと思いたかったから。

強がって“何度挑まれたって、君を渡すつもりはない”と言ってしまったけど内心は情けないくらいに弱く怯えていた。
僕の隣に繭子がいなくなってしまうかもしれない…その事を考えただけで苦しかった。


「勝ったっていうのに、どうしてそんな顔してるの。」


僕まで不安になる。
もしかして繭子は生徒会に行きたかったのかもしれない…。
そんな事を思わせるほど繭子の表情は寂しそうだったから…。
目が合えば力なく笑う繭子。
変に心臓が音を鳴らす。




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