学パロ。甘酸っぱい青春。
『三成くん、トリックオアトリート!』
放課後の生徒会室。
今月の各部活の活動報告をパソコンに打ち込む三成くんに、手を差し出す。
「名前、すでに真田や伊達や家康からお菓子を貰っていただろう。大体、貴様の仕事はもう終わったのか?」
パソコンから目線をずらす事なく、淡々と言う三成くん。
『仕事は終わったよ』
「そうか」
生徒会長である豊臣先輩命である三成くん。
そんな彼がハロウィンなどというイベントに興味を示さない事は分かり切っていた話。
別に、お菓子が貰えないからって落胆したりはしない。
『三成くんは興味無いと思うけど、一応お菓子作ってきたからあげるね』
そう言って、用意していた小さな包みを、三成くんの使っているパソコンの横に置く。
『手作りだから、早めに食べてね』
「ん」
聞いているのか、聞いていないのか分からない返事が返ってきた。
きっと後者だろう。
大丈夫、元から返事なんて期待していない。
処理し終わった書類をまとめて机に置き、生徒会室を後にする。
靴箱の前で靴を履き替えていると、ドドドと誰かが廊下を走る音聞こえてきた。
部活は既に終わっているので、学校に残っているのは生徒会メンバーのみ。
生徒会メンバーで廊下を走るような人はいないので、忘れ物をした一般生徒だろうか。
そんな事を考えていると、誰かに背後から腕を強く引っ張られた。
予期せぬ強い力に、バランスが取れなくなって体が後ろへ傾く。
倒れる!と思い、ギュッと目を瞑った。
『…あれ?』
衝撃に備えて受身をとったはずなのに、いつまでたっても肝心の衝撃が来ない。
そのかわりに、腰に回された見覚えのある手。
そして、背中から伝わる自分のものでは無い心臓の鼓動の音。
「間に合った」
『三成くん…?』
頭の上から聞こえた声に、戸惑う。
何故彼がここにいるのだろうか。
「お菓子、ありがとう」
『気付いたんだ。早めに食べてね』
「ああ」
『……』
「……」
『……』
沈黙が気まずい。
心なしか、背中から伝わる三成くんの心臓の音が速くなっている気がする。
何故、私は三成くんに抱きしめられたままなのだろうか。
いい加減離れないと、と思い、その旨を伝えようとする。
『あの…』
「名前、好きだ」
私が何か言うのを遮るかのように、耳元ささやかれたその言葉。
『…へ?』
「すまん、家康から貰った菓子を嬉しそうに食べている名前を見て、嫉妬した」
『……今日、素っ気なかったのはそのせい?』
「ああ」
『三成くんは、私の事が好き?』
「ああ」
『……』
「もし、名前が嫌でなければ、付き合って欲しい」
『…はい!』
<靴箱近くの空き教室にて>
「秀吉、三成と名前ちゃん、上手くいったみたいだよ」
「そうか…」
「ヒヒッ、会長どの、目が潤んでおりますぞ」
「いや…娘と息子が同時に嫁いだ心地でな…」
「彼らには幸せになって欲しいね」
「名前ー!何故じゃーっ!小生に優しくしてくれたのは嘘だったのかー!!」
「暗よ、ちと黙れ」
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