リクエスト | ナノ


▼ くまごろう様リクエスト

「……はぁ」

すっかり軽くなってしまった財布を見つめ、ため息をつく。

「金ピカは諦めるしかないのか…」

クレーンゲームの景品サンプルとして展示されている金ピカこと、ギルガメッシュのフィギュアを食い入るように見つめ、そう呟いた。

家の近所のゲームセンターにfate/zeroのフィギュアが入荷したと聞き、貯めていたバイト代をここぞとばかりに使って、ギルガメッシュ以外のフィギュアはゲットした。

「王よ…優先順位が低かったのを怒っているのですか…」

一番くじのギルガメッシュを持っているから…と、優先順位を最後にしたのがいけなかったのか。
「この雑種め」
というあのお決まりのセリフが頭の中でぐるぐると回る。

『風魔くん…?』

「!?」

なかなか諦められずに、じっとサンプルを見ていると、突然誰かに名前を呼ばれ、更に背中をつつかれた。
いきなりの事で対処出来ずに、大袈裟に体が揺れる。

『あ、やっぱり風魔くんだ』

「苗字さん…?」

振り返ると、自分より頭一つ分は小さい、小柄な少女が立っていた。
彼女の名前は苗字名前、同じ高校に通う同級生だ。
今年初めてクラスが一緒になったため、名前と顔しか知らない少女。
そんな彼女が、目を輝かせながら話しかけてきた。

『風魔くん、アニメとか好きなの?』

「え、うん…」

『っ!!な、仲間いたああああああ!!!』

苗字さんはそう叫ぶと、俺にギュッと抱きついて飛び跳ねた。
いきなりの事で、どうすれば良いのか全くわからない。

(生まれて初めて異性(母以外)に抱きつかれた…)

行き場のない手が宙を彷徨う。
背中に置けばいいのか。それともこのまま宙に漂わせておくべきなのか…
真剣に悩んでいると、パッとこれまた突然、苗字さんは俺の体の拘束を解いた。

『ご、ごめんなさいっ!同級生にアニメ好きの子が居るのが嬉しくて…!!』

「苗字さんも、アニメ好きなの?」

『好き!大好き!美少女系から美男子系、アクション物もエログロも、何でもござれですっ!!ゲームもマンガも好きだよ!!』

「あ、じゃあ…これ」

そう言ってマクロスfの歌姫、シェリルノームのフィギュアを差し出す。
残り枚数が少なくなっていて、且つB賞のフィギュアが残っていたので、運試し…と思って引いて当てた物だ。
もし彼女が欲しいと言ってくれるなら、彼女にあげた方がフィギュアも喜ぶだろう。
フィギュアでもグッズでも、何にでも言える事だが、欲しがっている人の元に行くのが作り手やグッズにとって一番良い事だと思う。

『シェ、シェリルさん…!!』

「よかったら、貰ってくれないか?」

『是非!是非頂きたく…!!でも、貰って良いの…?』

「うん。たまたま当てた物だから」

『では、遠慮なく…!!』

花の咲いたような笑顔で、シェリルを抱き締める苗字さん。
その姿を見て、新作のゲームでお気に入りのキャラを見つけた時のように、心臓の鼓動が早くなった。

(これは、もしや…)

恋、という物では無いのだろうか。
今まで生きてきて恋心を抱いたのは初めてなので、いわゆる初恋という奴だろうか。
うるさい心臓の音を無視するかのように、苗字さんの事を見つめる。

『ああ…ニーハイが食い込んでいる太もも…イイ…』

「……」

聞かなかった事にしよう。

『あの、これっ!お礼と言っては何ですが…!!』

ひとしきり、舐めるようにフィギュアを見た後、彼女がビニール袋を差し出してきた。

「中、確認してもいい?」

『どうぞどうぞ!!』

許可をもらい、ビニール袋を覗き込む。

「こ、これは…!!」

なんと、そこにはドヤ顔の金ピカAUO、ギルガメッシュがいらっしゃった!

『えへへ…さっきすごい真剣な顔で見つめてたから…』

「も、貰って良いのか…?」

『是非!』

「ありがたく頂戴します」

『うん!大事にしてね!!後、これを機にお友達になって頂けると嬉しいのですが…』

「友達…」

『だ、駄目かな…?』

「いや、嬉しい。よろしく、苗字さん」

『よろしく、風魔くん!!』

そう言った苗字さんがとても可愛くて、思わず「結婚しよ…」と呟いたのはここだけの秘密だ。




「16歳にして始めて恋をしました。
お相手は苗字名前さんという可愛い女の子です。
今はまだ友達同士ですが、今学年中には思いを伝えたいです。
明日から、毎日話しかけようと思います。」
(風魔の日記より)


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くまごろう様、リクエストありがとうございました!
オタクな小太郎さんを書くのは初めてで、どこまで書いていいのやらわからずあんまりオタクアピールが出来ませんでした…
無念。
個人的に、この二人が付き合った後も見てみたいので、番外という形で続きを書かせていただくかも知れません…。

読者の皆様が考えるネタが素晴らしすぎて本編の更新がおざなりになりつつある…
どうにかせねば…

それはさておき、
くまごろう様、リクエストありがとうございました!!
これからも、管理人共々このサイトを愛でていただけると幸いです。
どうぞご贔屓に!








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