▼ 珠凛様リクエスト
『ただいまー』
「おかえり、名前」
玄関で靴を脱いでいると、お父さんの声がした。
『そっか、今日はお父さん午前診だけかー』
そう言って、顔をあげると…
『お父さんが…2人?』
いつも通り男性にしては長めの髪を低い位置で束ねたお父さんと、同じく長めの髪をまるで丁髷のように高い位置でまとめた(見ようによってはキノコにも見える)お父さんがいた。
「これが卿の娘かね?」
「これ呼びはやめてくれないか。大事な娘だ」
「ふむ…確かに愛でる価値があるように見える」
「そうだろう。卿ならば理解してくれると思っていたよ」
『何これ…』
一言でいうと、カオス。
同じ顔、同じ声の人間が会話をしている。
少し冷静になって観察してみると、キノコ頭のお父さんに似た人は服装が変だ。
黒と白のアシンメトリーな服に、腰にさした刀。そして足元は靴下では無く足袋。
もしかして…
『お父さん、もしや…そちらの刀を差しておられる方は…』
「ふむ、利発な子だな」
「そうだろう。私の娘だからな」
「如何にも。私は戦国時代からやって来たのだよ。お嬢さん、松永久秀という名は知っているかね?」
『松永久秀!?』
思わず、お父さんと松永久秀さんを見比べる。
名前も一緒、顔も一緒、声も一緒なんてそんな事があるのだろうか。
いや、あり得るからこんな光景を目にしているのだが。
そもそも、どこで彼と父は知り合ったのか。
まさかまた拾ってきたとか…
『お父さん、松永久秀さんとはどこで…?』
「ああ、卿はな、落ちてきたのだよ」
『落ちてきたって…何処から?』
「空からだ。洗濯物を取り込んでいたら落ちて来たのだよ。某ラピスラズリの石を持った国民的アニメのヒロインのように、ふわふわ浮きながら。だから私はそれを受け止めた」
お父さんが松永久秀さんをお姫様抱っこしている図を想像する。
…駄目だ。同じ顔をした中年男同士でお姫様抱っこをしている姿なんか想像出来ない。
まず、想像するなと私の脳が告げている…
というか、松永久秀って長いな。
よし、久秀さんと呼ばせて頂くことにしよう。
そんな事より、こたにいはどこへ行った。
早く食べないと、せっかく買ってきたアイスが溶けてしまう。
『そんな事より、こたにいは何処にいるの?』
「そんな事とは…お嬢さんは酷い娘だ…」
「そうだ、せっかくだから一緒に昔のアルバムを見ようか」
駄目だこの二人。
元々変なお父さんをスルーするのも結構大変なのに、それが二人とかかわしきれない…
仕方が無い、対お父さん用最強兵器を呼ぶか…
大きく息を吸って…
「名前、私が悪かった。風魔くんは今庭の水やりをしてくれている」
私が対お父さん用最強兵器、その名も"お母さん"の名を叫ぶ前に、お父さんはこたにいの居場所を教えてくれた。
うん、良い判断だ。
私もお父さんがお母さんに膝詰めで説教されているところは見たくないからね…
『了解。あ、そうだ。ハイこれ』
ガサガサとコンビニの袋をあさり、中からアイスを取り出す。
『多めに買ったから食べていいよ』
そう言って、お父さん達に爽を押し付けた。
「なんだ、ハーゲンダッツでは無いのか」
『文句があるなら返してください』
「お嬢さん、これは何かね?」
『そっか…久秀さんはアイス初体験か…』
「あいす…?」
『こたにいを呼んでくるんで、皆で食べましょう。その時にアイスについて説明します』
「ふむ…了解した」
「…あいす…中々に興味深い…」
『おや、お気に召されましたか』
【今日はガリガリ君では無いのだな】
「がりがりくん?人の名かね?」
『ガリガリ君は商品名ですよ』
【名前、父上が端っこでしょげている】
「風魔くんにお父さんなんて呼ばれたくないもん…名前が構ってくれないんだもん…」
「卿、私の顔と声でそんな態度をとらないでくれたまえ」
『お父さん、正直に言うととても気持ち悪いです。いい年した男が"もん"とか正直ひきます』
「……」
ーーーーーー
リクエスト有難うございました!!
結局松永さんが戦国からトリップしてくる話になりました。
終始ギャグで申し訳ない…
甘いのをご希望であれば、また伝えて頂ければ書き直しいたします!
「こたくんと戦国へ行く」
こちらは本編で描写する予定なので、そちらを待っていてくださると嬉しいです!
「各武将がおうちにやって来る」
こちらも書きたかったのですが、プロットを作っている内に話が膨らみすぎて纏まらなくなってしまったので諦めました…
この長編連載が終わったらチャレンジしてみたいと思っておりまする!
我が家の風魔さんが貴女様の癒しになっていれば幸いです。
これからも是非ご贔屓に!
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