一ヶ月記念 | ナノ


▼ 意識せずにはいられない

【意識せずにはいられない】

「小太郎……小太郎」

耳触りの良い声がする。
彼女が、自分の名前を呼んでくれている。
それに、風魔は顔を上げた。

「小太郎…」

「ん…」

と彼は答える。
すると、目の前の彼女は…

「ん…じゃない!」

バッチーンと、強烈なビンタを風魔に御見舞いした。

「!!?」

「もう!次の授業は移動教室だよ!
いつまで寝てるの!!」

そう少し怒りぎみに言いながら、なまえは風魔の手をとり歩きだす。
繋いでいない方の手には、ちゃっかり風魔の分の教科書も収まっていた。

「まったく…最近の小太郎はおかしいよ…。授業中はずっと寝てし…寝てるかと思えば、じっと私の方を見てるし…」

と言いながら、彼女は深いため息をついた。

風魔となまえの座席は、何故かいつも隣同士だ。
実際は風魔が先生を脅して隣同士にしているのだが、なまえがそれを知る由もない。

隣の席の風魔が、ずっと机に突っ伏している。
幼馴染で無くとも、普通は親切心で起こして上げるだろう。
だから、なまえも彼を起こした。
でも、それは間違いだった。
風魔は起きた後、こちらを見つめて来たのだ。
授業が終わるまで、ずっと。

長い、目を隠すかのように伸ばされた
前髪のせいで、実際は何を見ていたのかはわからない。
もしかしたら私の方にいる誰かを見ていたのかもしれない。

(嫌だな…)

そう考えて、なまえは悲しい気持ちになった。
いつ頃からか、風魔をただの幼馴染と思えなくなっていた。
まるで自分の半身のような、そこに、隣にいる事が当たり前な存在。
そして、それが恋心へと変わるまで、そしてその恋心に気付くまでに、そんなに時間はかからなかった。
きっかけは、とても些細な事。
友人たちと面白半分でやった、雑誌に書いてあった占いの結果で出た理想の男性像が、風魔と酷似していたのだ。

(でも、小太郎は私の事をただの幼馴染としか思っていないんだろうな…)

そう思うと、何だか泣きたくなってきた。

なまえが涙を堪えながら歩いていると、

「なまえ…」

風魔の少し戸惑った声がした。

「どうしたの?」

「教室を過ぎてしまった。なまえは何処に向かっているんだ?」

「えっ!?」

なまえが慌ててあたりを見回す。
自分たちの行くべき教室が、自分の進行方向の反対側に見えた。

「ごめん、戻ろう」

「なまえ、何か悩み事があるのか?
俺でよければ聞くぞ」

「あー…うん。大丈夫。たいした事じゃないから」

そう言って歩きだす。
風魔が繋いだ手をギュッと握ったのを感じて、少しなまえの顔が赤くなった。






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