一万打御礼! | ナノ


▼ 好きなんです、貴女の事が

【好きなんです貴女の事が。だから】

時間は昼の3時。
ピンポーンと、チャイムの音が鳴った。
今日は明智せ…じゃなかった、光秀さんとデートをする。
人生初のデートなので勝手がわからず、昨日は服を選ぶだけで2、3時間は使ってしまった気がする。
「お前にもそんな乙女な所があったのか」
とお父さんに言われて腹が立ったので、腕ひしぎをきめてやった。

いつまでも門の前で光秀さんを待たせるわけにはいかない。
そろそろ行かねば…。

『いざ、参る!!』



「おはようございます、さつきさん」

『オ、オハヨウゴザイマス』

何いうことだ。
目の前に、黒塗りのベンツが止まっている。
しかもSクラス。
一番高いやつじゃないですか!!
以前乗せてもらった時はトヨタのプリウスだったじゃないですか!!

「ふふ…そんなに緊張する事はありませんよ」

そう言って、後部座席のドアを開けてくれる。
後部座席のドアを。

『助手席じゃないんですか…?』

車でデートといえばやはり助手席に座るのが普通だろう。
後部座席に座る彼女…
彼氏彼女という関係ではなく、上司と部下の関係になってしまう気がする。
しかも、私が上司。

「いえ…今日一日、貴女はお姫様ですから」

『……は?』

今、鳥肌が立ったぞ。
お姫様って何ですか、私そんなキャラじゃないです。
というかこんな170後半の身長の女がお姫様とか、可愛いのかの字も無いです。

「冗談です。隣へどうぞ」

戸惑って固まっていたら、光秀さんが笑いながら、今度は助手席のドアを開けてくれた。
良かった、冗談で。
このまま後部座席に押し込められたら、恥ずかしさや居た堪れなさでデートを満喫出来ないところだった。

助手席に座り、隣の光秀さんを観察する。
心なしか、何時もより表情筋が緩んでいる気がする。
光秀さんも今日のデートを楽しみにしてくれていたのだろうか。
そうだと良いな。

そんなことを考えていると、いつの間にか車が走り出していた。
流石超高級車。
シートも革張りで凄いですが、エンジン音も静かです。

『光秀さん、何処に行くんですか?』

実は、デートプランをまだ聞いていない。
何時メールしても、直接聞いても
「当日のお楽しみです」
と言われ、教えてもらえなかった。

「マキシ丈のワンピースですか…似合っていますよ」

『光秀さん、私の質問を無視しないでください』

「着いてからのお楽しみです」

『…わかりました』

これ以上言っても教えてもらえなさそうなので、この話題は終わりにする。
その後、学校での出来事や塾での出来事、テレビの話などをしていたら、いつの間にかショッピングモールに来ていた。

「さあ、最初の目的地に着きましたよ」

『ショッピングモールで何するんですか…?』

「買い物ですよ」

さも当然のように出てきた言葉。
そりゃあ、ショッピングモールに来たのだから買い物をするのが普通だが…

『誰の?』

そう、誰の買い物をするのか。
この質問に…

「さつきさんと私の」

といたって真面目な顔で返された。

『私、そんなにお金持って来てませんよ』

「その点は問題ありません。が、時間があまりないので、すぐにお店へ行きましょう」

そう言って、光秀さんは私の手を取り何処かへと進んで行く。
一体何処に連れて行く気なのか。
お金の問題は無いとはどういう意味だ。
まさか奢ってくれるというのか。それは申し訳なさすぎる。


暫くして辿り着いた場所は、最近私達の世代で人気の服のブランドのお店だった。
人気だけど、値段が高くて中々手が出せないブランド。
握っていた手を解き、光秀さんが店員さんを呼び止める。
こちらを見チラ見しつつ何やら話した後、店員さんが物凄い笑顔でこちらへやって来た。

「お客様、こちらへどうぞ」

有無を言わさぬオーラでそう言った店員さんに連れられて、たどり着いたのは更衣室。
それも、鏡付きのとても立派な更衣室だ。

「少々お待ちください」

そう言って店員さんが外に出て行った数分後…

「お客様、こちらに着替えて下さい」

そう言って差し出されたのは丈が膝より少し上の白いワンピース。

『これに着替えるんですか?』

「はい」

笑顔でそう言われ、渋々着替える。

「よくお似合いです!!」

そう言いながら差し出されたのはヒールのある靴。
いつもの癖で今日はヒールの無い靴を履いて来たのだが、アレは何処にやったのか。

「ご安心ください。先ほど着ていらっしゃった服と靴はこのショッパーの中に入れております」

そう言って、今度はショッパーを渡してもらう。
至れり尽くせりだな。

…ちょっと待て。

『何で服と靴がショッパーの中に?』

試着じゃなかったのか、これは。

「さあさあ、お連れ様がお待ちですよ」

質問を華麗にスルーされ、強制的に更衣室から退出させられる。
お店の外に出ると、シャツとジーパンという先程までのラフな格好から、スーツというフォーマルな格好に着替えた光秀さんが立っていた。


「明智様、如何でしょうか?」

「とてもよく似合っています。有難うございました」

「いえいえ、こちらこそ有難うございました」

「では、さつきさん、行きましょうか?」

『…はい?』

ちょっと待ってどういう事だ。
車へと向かいながら説明をして貰う。
どうやら、店員さんと光秀さんは前もって私に似合う服を見繕っていたらしい。
更に、洋服代も靴代も前もって光秀さんが払っていたらしい。
だからお金の心配はいらないと言っていたのか。

『その、気持ちはとても嬉しいのですが、こんなに高いプレゼントは受け取れません』

このブランドの服は安くても一万円はする。
それなのに、見るからに質の高いワンピースと靴なんて、幾らかかったのか…
考えるだけでも恐ろしい。

「そう言わず、受け取ってください。大体、その服を返されてもどうしようもないんですよ。私は着れませんし」

「何より、さつきさんに服の一つや二つも買ってあげられない、甲斐性の無い男だと思われたく無いのです」

ここまで言われてしまったら、もう断れないじゃないか…

『…有難う御座います』

「はい。
ところで、もう一つ貰って頂きたいものがあるのです」

そう言って差し出されたのは、手のひらに収まるサイズの小さな箱。

『開けてもいいですか?』

「是非」

ドキドキしながら箱を開けるとそこには

『ネックレス…』

リングモチーフのネックレスが収まっていた。

「好きなんです貴女の事が。だから、結婚を前提にお付き合いして頂けませんか?」

『結婚を前提…』

「はい」

『途中で捨てちゃわないですか?』

「それは此方のセリフです。
私がどんな性壁の持ち主でも、見捨てないですか?」

『…そんなの、今更です』

「では…」

『お受けします。
結婚を前提に、お付き合いして下さい』

「では、次の目的地へと向かいましょう」


そう言って、光秀さんが車を走らせる。
もうちょっと、こう、余韻に浸らせてはくれないのか。
でもこれも今更か。

変態で、空気が読めなくて、でも凄く頼りになる、そんなあなたが大好きです。







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