十万打リクエスト | ナノ


「…というわけで、名前がお弁当作ってくれなくなりました」

「それは…」

──それは、お前が悪い、左近。

放課後の生徒会室。
いつも通り定例会に参加するために、扉を開けた。
何時もなら鬱陶しいくらいに元気良く挨拶してくる左近が酷く落ち込んで、机に突っ伏していたから。
まあ、たまには話を聞いてやるか、と事の次第を聞けば、何て事は無い。
何て事は無い、ただの惚気話だった。

「秀吉様ー。
俺、名前に嫌われちゃったんでしょうか…」

「いや、嫌われたというか、愛想を尽かされたんじゃないかな ?」

「半兵衛様、それもっと酷いっすよ…」

さて、どうしたものか。
このまま惚気話を聞かされ続けるのは遠慮したい。
かといって、可愛い後輩が彼女に棄てられるのを黙って見過ごすわけにもいかない。

「左近、お前は乙女心というのを学んだ方がいい」

「乙女心、っすか」

「そうだ、乙女心だ。
あの問いは、"三成様も好きだけど、名前の方が好きだ"が正解だ」

「え、まじっすか。
両方じゃダメっすか」

「駄目だ」

「うわ、断言された」

両方は駄目だ。
我もねねに
「私と半兵衛くんと、どっちの方が大事なの!?」
と聞かれて、"両方"と答えてしまって一週間口を聞いてもらえなかった。
だから断言しよう。
両方は、絶対駄目だ。
優柔不断が一番質が悪い。

「あの時は本気で落ち込んでたもんね、秀吉…」

「ああ、半兵衛のアドバイスが無ければ仲直り出来ていなかっただろうな…」

半兵衛のアドバイスが無かったら、きっと、ずっとあのままだっただろう。
女の執念深さと忍耐力を侮ってはいけない。
彼女等のそれは、男の予想を遙かに超える。

「え、ちょっ、俺にも教えて下さいよ、仲直りの仕方…!!」

「ふふっ…
何、簡単な事だよ。
ひたすら、ご機嫌取りをするのさ。
女の子が好きそうな所でデートして、女の子が好きそうなプレゼントをあげて。
最後に"君が一番だよ"と言うだけでいい」

「…それ、超恥ずかしいじゃないっすか」

顔を真っ赤にして左近が俯いた。
飄々とした掴み所の無い奴だと思っていたが、存外可愛らしい所もあるらしい。

「…頑張れ、応援している」

「今週末にでもデートに誘うといいよ」

「お二人とも、ありがとうございますっ!!
島左近、頑張ります!」

──今週末は、久方ぶりにねねをデートに誘おうか。







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