捧げ物 | ナノ


▼ 編みぐるみ

『えへへー』

「名前さん、何やらとても嬉しそうですね?」

『…分かります?』

【先程から頬が緩みっ放しだ】

『実は、ですね…』

"じゃじゃーん"と効果音をつけて制服のポケットから取り出したるは、今日の家庭科の時間に作った毛糸の編みぐるみ。
手のひらサイズのそれは、こたにいと光秀さんを模したもので、頭頂部にストラップ用の輪っかも付けられている。

『思っていた以上に良く出来たので、お二人に差し上げようと思いまして』

はい、と2人に編みぐるみを押し付ける。

「これは…確かに。
よく出来ていますね」

様々な角度から編みぐるみを観察しつつ、光秀さんが感想をくれた。

『これでも家庭科の成績は良い方なんです!』

「将来、いいお嫁さんになりそうですね」

『そんな冗談言って…
もし売れ残ったら光秀さんに責任とって貰っちゃおうかなー』

「おや、良いんですか?
私は全く構いませんよ、むしろ今すぐお嫁にしたい」

『ごめんなさい冗談です』

ははは、と引きつった笑みを顔に浮かべていると、こたにいに制服の端をギュッと掴まれた。

『はい、何でしょう?』

【名前、これの作り方を教えてほしい】

『作り方?構いませんけど…
どんなものを作りたいんですか?』

【…名前を作りたい】

『…!!』

何ということだ。
こたにいが私を編みぐるみで作ってくれるらしい。
器用なこたにいなら、きっと数回教えるだけで編み方をマスター出来るはずだ。

『それ、完成したら私にくれますか?』

【ああ、勿論】

『教えて差し上げましょう!』

貰えるのならば、気合を入れて教えねば。
時間が惜しい。
こたにいの分のかぎ針と糸を取りに行こうとした所で、部屋のドアががチャリと開いた。

「名前、私の分は無いのかい?」

そう言いながら、開いたドアからお父さんが部屋へ入って来る。

『お父さんも編みぐるみ作りたいの?』

編みぐるみは元々はお父さんの趣味だ。
私が教えずとも、お父さんなら高クオリティの物を作ることが出来るはず。

「いや、作りたいわけでは無い。
…私の物は作ってくれていないのかい?」

『あ』

言われてから気づいた。
こたにいと光秀さんの分を作るのに夢中で、お父さんのを作るのを忘れていた事を。

「……無いのか」

『ご、ごめんなさい!忘れてた!!』

「……最近娘が冷たい」

お父さんはそう言うと、壁に人差し指で"の"の字を書き出した。
いい年した大人がいじけて"の"の字を書く姿は、見ていていたたまれない。

『ごめんなさいっ!
だって私に編みぐるみの編み方を教えてくれたのお父さんだし!
私からのなんていらないかなって!!』

必死に言い繕ってみるものの、お父さんは落ち込むばかり。

「高校に入ってから冷たくなったとは思っていたが…
風魔が来てからはさらに冷たく……」

『お父さん!また暇な時にお父さんの分も作るから!』

「ふふふ…お義父さんよりも私達の方が愛されているようですね…」

【ああ。名前は俺たちの方が好きらしい】

「…卿等に"お義父さん"と呼ばれる義理はない。
爆殺されたいのかね?」

『あーーー!!もうっ!!
何でこういう時だけ結託するんですか、お二人は!!
お父さんも!室内で火薬は禁止!!』

白熱していく"お父さんvsこたにい・光秀さん"の戦いを私が止めることは出来るはずもなく、夕飯の買い出しから戻ったお母さんが雷を落とすまで続いたのだった。



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ゴジ子13様
遅くなってしまい、申し訳ありません!!
こんな感じで宜しかったでしょうか…?

書き直しはいつでも承りますので、お気軽にご連絡下さい!




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