捧げ物 | ナノ


▼ 私が強くなればいい!

桜様リクエスト。
歴史捏造してます。
苗字は北条で固定です。


『風魔さん!今日こそ稽古をつけて下さいっ!!』

「………」

「ほっほっほ…名前や、またやっておるのか」

『はい!お祖父様!私、名前は…必ずや北条の名に恥じない武将になって見せましょう!』

「……」

最近、主のお孫さんの名前がやたらと絡んでくる。
齢は15、そろそろ嫁いでも良い年頃だが、彼女に嫁ぐ気は無いらしい。
結婚願望はあるが、嫁ぐ気は無い。
婿をもらいたい、との事。
彼女曰く、
『お祖父様もお父様も、人柄的にはとても良い方々なのですが…
戦や駆け引きの能力…独眼竜は"せんす"と言っていましたか。
"せんす"が圧倒的に足りないのです。
このままではこの乱世を生き残って行くのは難しい。
ならば、私が強くなればいいのです!
そして、強い婿を貰う。そうですね、独眼竜や武田の若虎、豊臣の左腕あたりが来てくれれば同盟も組めて一石二鳥なのですが…』
…らしい。

これを聞いた時、正直驚いた。
赤子の時から見守ってきたので、年の割に聡明で、老成しているのは知っていたが、まさかそんな事を言い出すとは。
その話をされて以来、彼女は俺に事あるごとに"稽古をつけてくれ"と頼むようになった。

「……」

「風魔が
「城の兵士に頼めばいいだろう」
と言っておるぞ」

『先日、兵士の方々と打ち合いをしたのですが、皆さん弱すぎます!
私のような細腕の女子に負けるなんて!』

「おお、名前、偉いぞ」

名前の衝撃の一言を聞いて、主は驚くでもなく嬉しそうに彼女の頭を撫でた。

「……」

唖然、とはまさにこの事。
それで良いのか。
怪我をするぞ、とか、女子が刀など…とか、そういうのは無いのか。

「風魔や、一度でいいから相手をしてやってくれんかのう?」

「……」

「のう?」

「……」

「おお!やってくれるか!
名前、風魔が一度だけなら、と言ってくれたぞい!」

『ありがとうございます!』

「……」

この後、俺は"相手をする"事に了承したのを後悔した。

『流石です風魔さん!でも手を抜いておられますねっ!』

「……」

想像以上に名前は強かった。
確かに手は抜いていたが、部下に稽古をつける時程度の抜き方だ。
手を抜いた事に腹を立てた彼女は、予想だにしないものを放った。

『今まで隠してきましたが…私だって婆娑羅者なんですからねっ!』

刀の斬撃の風圧にしては重すぎるものが、自分めがけて飛んでくる。
避けるのに失敗し、右腕に一筋傷が走った。

「…っ」

完全に油断していた。
思っていた以上に傷は深いらしく、ダラダラと止まることなく血が流れ出る。

『ごめんなさいっ!!』

某然と立っていると、名前が泣きながら駆け寄って来た。

『手加減して放ったつもりだったのですが…まだまだ修行が足りませんね…』

「……」

彼女がこのまま独学で婆娑羅技を身につけたらどうなるのか。
身につける前に暴発して死んでしまうかもしれない。
頭の中の算盤が、パチパチと音を立てて凄まじい勢いで弾かれる。

『風魔さん?いかが致しました?』

「……」

「名前や、風魔が"婆娑羅の使い方を教えてやる"と言っておるぞ」

『!?本当ですか!!』

ぎゅっといきなり名前に抱きつかれる。
さっきまで泣いていたのに、今は満面の笑みだ。
流石、女子。感情の切り替えが早い。
この子には泣き顔より笑い顔の方が似合う…
そんなことを考えながら、自分より五寸ほど下方にある頭を撫でてやると、名前は嬉しそうにさらに笑みを深めた。




『…そうだ!
独眼竜も若虎も左腕も婿に迎え入れるのは無理そうですし、風魔さんが婿に来れば良いのです!』

「!?」


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桜様、リクエストありがとうございました!
書き直し、いつでも承ります!



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