「レイリーさんて、いつもどこで寝泊まりしているんですか?」



久々にシャッキーさんのお店に帰ってきたレイリーさん。彼が海賊王の右腕とか、今でも懸賞金が掛けれているとかは知っているけど、レイリーさんはまったく悪い人に見えない。だから私はこうして、彼の傍により色々な話をしているのだ。

今日も今日とて、カウンターでお酒をちびちび飲みながらレイリーさんは私の話に付き合ってくれていた。もう太陽は沈んでおり酒を飲むにも丁度よい時間帯。シャッキーさんは私にお酒を出してくれず、代わりにオレンジジュースを出された。失礼な、これでも一応お酒飲めるのに。


そんな時した質問。お酒を飲んでいたレイリーさんの腕はぴくりと止まり、コップの中に入っていた氷はカランと軽い音を立てる。しては、いけない、質問だったのだろうか。



「あら貴女、この人の寝泊まりなんて興味あるの?」

「え、あ、いや違いますよシャッキーさん!ただ、何カ月も帰って来ないなら、お友達の家にでも泊ってるのかなーって思って」

「ふふ、可愛いわね。……で、どうなの?」

「はっはっは、私はそれを答えなければならんかね」



盛大に笑うレイリーさんを見て、シャッキーさんはふふふと小さく笑う。恐らく、シャッキーさんはレイリーさんがどこで寝泊りをしているか知っている。でも、それを教えないのは所謂私には言えない『大人の事情』なんだろう。


「すまんね」とレイリーさんはなにも悪くないのに、突然私に謝罪をした。そしてコップを置いた手でわしゃわしゃと私の頭を撫でる。空になった私のコップをシャッキーさんは持っていき、新しい飲み物をいれてくれていた。

頭を撫で続けるレイリーさんを見上げる。



「…『大人の事情』、ですか?」

「まあ、そう言うところだ」

「なるほど」



目を細めて笑ったレイリーさんから視線を外し、改めてシャッキーさんから出された飲み物に口をつける。オレンジジュースでは無いなにか。

口に含んだ途端にほろ苦い味が広がり、呑み込むとお腹辺りが温かさに包まれる。あ、これお酒だ。そう確信するときにはもう、私の意識はフェードアウト。



「あらら、すぐに寝ちゃったわね」

「なにをしたんだ」

「即効性の睡眠薬。…アナタが話しを聞かれたくなさそうだったから助けてあげたのよ」

「はっはっは、それは感謝せねばな」

「……でも、この子自分のこと分かってるのかしら」

「知らんだろうよ。家族が居ないこの子には」



カウンターの上で、腕を枕にしてすやすや心地良い寝息を立てる少女を、二人は見下ろしていた。レイリーは先程置いたグラスを持ち直し、それを口に含み飲む。睡眠薬を混ぜた張本人、シャッキーは可愛らしい寝顔を見て、小さく微笑んだ。

この子――名前は海賊王、ゴール・D・ロジャーの姪にあたる。と言っても名前はそれを知る訳もない。家族は姿をくらましたからだ。



「…ロジャーの血が、遠くも生きている事を知れば海軍はこの子を狙う。そのためにも、この子は知らん方がいいのさ」

「……もし海軍が知った時、アナタはどうするの?」

「なァに、ロジャーの血を守るために戦うしかなかろう」

「フフ、本当にそれだけかしら?」



それだけではないと、本人も分かっていた。娘のような愛情か、それとも異性に対する愛情か分からずも、レイリーは名前に少なからずも愛情を抱いていた。ロジャーの血を守るためと言いながらも、恐らくはその『愛情』のために動くのだろう。とレイリーは確信していた。

意味ありげに笑むシャッキーの言葉を、笑って一蹴してからレイリーは彼女を横抱きに抱きあげる。「上の部屋を借りるぞ」と一言残してから、2階へ続く階段を上がる。シャッキーは肩を竦めながら見送り、カウンターに残された二つのコップを片付け始めた。


2階の部屋に来たレイリーは、抱きあげていた彼女をベッドに寝かせた。抱きあげても起きる様子のないところを見ると、そうとう深い眠りについているのだろう。

ベッドに寝かせ、身体に毛布を掛けるとレイリーはベットの端に腰を掛け、健やかな寝顔の名前を見詰めた。



「昔はあんなに小さかったんだが……成長とは早いものだ」



美しく細い指の己の、年老いた指を絡める。一方的に手を握ると、名前は手に温もりを感じたのかレイリーの手を握り返した。それに彼は目を瞠るが、すぐに穏やかな笑みを浮かべる。

空いている手で前髪を掻き上げ、その額に口付けた。






「ん…ん、……?」
「…………スー…」
「?!、レ、レイリーさん…?!」
「ん……あ、ああ名前、おはよう」
「あ、おはようございます。じゃなくって!何で私レイリーさんと同じベッドでね、ねねねね寝てたんですか!」
「ああ、昨日突然眠ってしまった名前を運んだのはいいが、どうも手を話してくれなくてな」
「す、すみません…!」
「なに、謝ることはない。私もいい思いをさせてもらった」
「は?!」
「はっはっは!気にするな、老人の戯言だと流してくれて構わん」
「っ、もう!」
「照れるとは若い証拠だ、名前。これからももっと照れた顔を見せてくれると嬉しいんだがな」
「………レイリーさんといるといつも恥ずかしいです…!」
「それは嬉しいことを言ってくれる。楽しみが増える」
「レイリーさん!!」
「はっはっは」




******
シャ、シャッキーさんもレイリーさんも口調が分からず撃沈/(^^)\
一体なにをしたかったんだ自分は。いや、レイリーさんが書きたかっただけなんだただ単にそれだけだ←←

100821
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