また一人斬り伏せる。これで何人目だ
 か、もう覚えていない。そんなもの数
 えていたらきっと平静ではいられない
 だろうから。
 棍棒みたいな武器が俺の頭上に翳され
 たのを見た。咄嗟に斬り返した刀はち
 ょうど敵の首を刎ねた。びしゃ、と散
 る血が妙に粘っこく頬なんかに伝って
 気持ち悪い。
 それでもそれを拭う暇もないからただ
 歯を食いしばる力を強くして耐える。
 時々ふと思うのだけど、こんなとき。
 なんで俺はこんなとこでこんなことし
 てんだ、と。まあ今更何を忘れようと
 思い出そうとここを抜けられる訳でも
 ないから結局頭に兆した逃避の文字は
 ばらばらに崩れてどこかへ消えていく
 。
 巡れど巡れど夜は夜、逃げる場所もそ
 んな勇気もなくただ開戦を連れてくる
 夜明けを見ては地平線の向こうに思い
 を馳せる。
 幸せは全く掴める気もしない。手のひ
 らは仲間の命でいっぱいなのだ。早く
 この悲劇が終わらないかとまた、姿を
 見せた絶望の眩しさに目を細めた。



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