夜半、ふ、と懐かしい匂いがしてもそ
 もそと布団から抜け出した。ひやりと
 した空気が肌を刺したが気にせず静か
 に玄関の戸を開けて階段に向かう。一
 歩踏み出す度に強くなる煙草の匂い。
 階段を降りきった時暗くて見えなかっ
 た場所から高杉がゆっくりと歩いてき
 た。ひゅう、と風が吹いて体がぶるり
 と震えた。

 「寒ィのか」
 「あたりめーだ」

 ぱさ、と衣擦れの音がして高杉の熱を
 含んだ高そうな羽織が肩にかけられた
 。

 「優しいじゃねーの」
 「俺ァ今あちーんだよ」

 ぎゅう、と抱き締めながら素直じゃな
 い高杉はそう言った。高杉は過激派攘
 夷志士、そうそう会える訳じゃなく今
 日も二ヶ月ぶりの逢瀬だ。たまにしか
 会えないからか昔より格段に優しくな
 ったような気がする。

 「高杉、」

 どちらからともなく口づけを交わす。
 苦くて俺好みの味がした。唇をぺろ、
 と舐めて高杉の顔が離れた。

 「寒ィなら風邪引くといけねェ。もう
 寝な」
 「…ああ」

 最後に一度だけ抱き合って俺は高杉に
 背を向けて寝室を目指す。たった数十
 分の逢瀬。次は一体いつになるやら。

 「いい夢見なァ、銀時」

 床について目を閉じた時、ふわりと香
 った高杉の匂い。夢の中でも会えたら
 いいなあ、なんてね。



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