俺の足にしがみつく奴がいる。もの凄
い形相で俺を睨むそいつは俺が護れな
かった仲間だった。
「う、わ…」
目をあけた。俺の足にしがみついてい
たのは辰馬だった。この野郎。おかげ
でひどい夢を見た。
「銀時、」
ヅラの声がした。暗くてよく見えない
がそう遠くはない。安堵の溜め息をつ
く。
「うなされていたぞ」
「あー…、うん」
「大丈夫か」
「ん」
大丈夫、大丈夫なんだろうか。前髪が
汗で額にはりついて気持ち悪い。
「なんで」
「ん」
「なんでこうなったんだっけ」
「…もう休め」
ヅラがゆっくり立ち上がって静かに俺
の隣に座った。
「ほら」
差し出された手のひらには飴玉が乗っ
ていた。
「食って休め」
「うん」
受け取って包みを開いて薄ピンクのそ
れを口に含む。甘い。イチゴ味だった
。
ころりからり。飴が転がる音が廃寺に
響いた。
「お前は、」
「…」
「間違ってなんかない」
「ん」
冷えた頬にじんわりと熱が伝わる。ヅ
ラの腕が背中をさする。遠い昔の先生
のように、それは暖かかった。