がたがたと大きな音がして目が覚めた
 。背中が痛い。よく見たらソファの上
 だ。そりゃあ背中も痛くなる。

 「寒ィ」

 今何時だろう。テレビをつける。昼ド
 ラのちゃちい曲が静かな室内にやけに
 響いた。もうこんな時間。新八はどこ
 だろう。

 「しんぱちィー、かーぐらァー」

 返事はない。依然うるさい曲を流し続
 けるテレビを黙らせる。

 「寒ィ」

 買い物だろうか。まあ何にせよ一人だ
 。

 「寒ィ」

 無意識に寒いを連呼するのは何でだろ
 う。うるさいのがいなくて広く感じる
 部屋でぼんやり宙を見る。
 ふと気がついた、頬を撫でる風。窓が
 開いている。だから寒いのか。

 「うー、さむっ」

 窓に近づき手早く閉め、ようとして止
 まった。雪が降っていた。道理で寒い
 訳だ。ソファから被ってきた毛布を更
 に体に巻きつけ窓はそのままに社長椅
 子に腰かける。行儀悪く足を上げ出来
 るだけ体温を逃がさないようにして窓
 の外の白を睨む。
 ババアと会ったのもこんな日だった、
 ような気がする。あ、饅頭食いたくな
 ってきた。買いにいくか。

 そんな訳で饅頭を買いに家を出た。饅
 頭、って甘味処にあるよな。
 饅頭で頭をいっぱいにして歩いていた
 ら後ろから声を掛けられた。

 「何してんですかィ」
 「おー、総一郎くんじゃん」
 「旦那、総悟でさァ」

 総一郎くんと、瞳孔ガン開きの多串く
 んが立っていた。

 「で、何してんだ」
 「んー、雪が降ってるから饅頭買いに
 きた」
 「理由になってねーじゃねーか」
 「いーや理由になってるね」

 饅頭食べなくちゃ死ぬんだから!

 そう言ったらそれは旦那だけですと返
 された。それもそうかもしれない。



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