灰色の空は今にも落ちてきそうな程重
そうだ。垂れ込めた死臭。半月の明か
りはあまりにも心許ない。
緩い風にふるりと体を震わせる。左手
の刀がかちゃりと鳴いた。
歩いても歩いても死体。人間と、天人
の死体。不気味な位静かな世界。よく
知った世界。
気が付いたらここにいた。気が付いた
ら左手に刀があった。気が付いたらこ
んな生活だった。
多分これは普通じゃない。自分以外に
同じような生活をしている奴は今のと
ころ見たことがない。
見かけた子供はきれいな着物を着てい
た。美味しそうなものを食べていた。
良いなあとは思うけど、どうしようも
ない。見上げた空はまだ鉛色だ。光が
射すのはいつだろう。