「おい山崎」

 からり、と軽い音を立てた障子。開け
 たのは

 「副長?」
 「なんか食うもんねーか」

 腹減った、とぼやきながら煙草をすぱ
 すぱ。煙が室内に流れ込んできて少し
 咽る。

 「あんパンならありますけど」
 「あんパン…」

 あ、この人甘いのダメなんだっけ。い
 らないかな。

 「すいませんけどそれしか」
 「…しゃーねえ、くれ」

 ビックリだ。この人が妥協した。

 「ホントに腹減って死にそうなんだよ
 、こっち見んな」

 これは相当だな。なんで食堂行かない
 んだろう。

 「食堂、沖田が壊しやがった」
 「隊長オオオオオ!?」

 あの人どんだけ副長嫌いなんだよ…。

 「まあ、いいからあんパン」
 「あ、はい。どうぞ」

 うわぁ、副長とあんパンの奇跡のコラ
 ボレーション。

 「お茶淹れましょうか」
 「悪いな」

 ていうかここで食べるんだ。

 「甘ェな」
 「あんこですから」

 うわぁ、もぐもぐしてる。いや、当た
 り前だけど。副長がもぐもぐしてる。

 「見てんじゃねーよ」
 「え、あ、すいません」

 なんか可愛いな副長。今日はあんまり
 怒らないし。餌付けしてる気分だ。

 「うまかった」

 早っ!どんだけお腹空いてたんだよ早
 っ!

 「ありがとな山崎」
 「はい」

 からり、入ってきた時と同じように軽
 い音で副長は出ていった。

 「変な気分だなあ、」

 よく晴れた昼下がりの屯所で山崎の呟
 きは薄く分散して消えていった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -