これが恋だと気付いた時、死のうかと
 思った。失礼なことだけど、いや本当
 に。あの男はないだろうと思った。

 「旦那」
 「んー」

 こんな適当な返事に嬉しいと感じる自
 分は馬鹿だ。こんな適当な男に惚れた
 自分は馬鹿だ。
 分かってる。分かってる、んだけど。

 「好きです」
 「…いきなり何」

 好きだ、すごくすごくすごく好きだ。
 ちょっと赤くなった頬とか、ページを
 捲る手が止まってるのとか、可愛くて
 仕方ない。

 「旦那は、」
 「うん」
 「どうですか」
 「どう、って、そりゃ」

 好きだけど

 照れて小さくなる声が愛しい。どうし
 ようもないくらい。

 「旦那」
 「なんだよ、」
 「可愛すぎです」
 「ば、ばかじゃねーの」
 「ええ、馬鹿です」

 貴方にだけ。



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