真選組屯所。依頼で来ていたムサい男
だらけの別段楽しくもない場所に別れ
を告げてそこそこ綺麗に整えられた庭
の砂利を崩して歩く。ざりざり。
ムカつくマヨラーが持ってきたのはか
なりいい仕事だった。大して強くもな
いがまあまあ弱くもない隊士達に稽古
をつけてやる、それだけ。
そのわりに結構な報酬。やはり付き合
いと定職は大事だ。
あーほんと、いい仕事だった。
なんてそう近付いてきた門をぼんやり
と視界に入れつつ考えているとふと赤
いものが見えた。こんなところに、赤
。
なんだろうと目をやればぽとり。顔を
向けた途端強く吹いた風にそれは重力
に逆らいきれず地面に吸い付いた。
何故か重なるのは落ちたばかりの天人
の奇怪な色をした首。
倒れる胴体に首がない様は見慣れても
尚鳥肌が立つ気味の悪いものだった。
しかしだからといって止まる訳も止ま
れる訳もなく。
がむしゃらに刀を振るい続ける自分は
今しがた倒れたそれよりも余程気味の
悪いものに違いない。
オイ、と声を掛けられ我に返る。何を
思い出しているんだ、俺は。
振り返らずとも声でわかるそいつは返
事を待っているのかいないのか、一言
も発することはない。
少し迷ってから振り返るとやはり土方
がいて、横には沖田もいた。
何してんですかィ、といつもよりは興
味のあるような声で沖田が訊ねてくる
。別に話す必要もないが言ってはなら
ない事でもない。
「椿って首みたいで、鳥肌が立つ」
ぼそりとそう言えば
「そうですねィ」
とそれだけ言って楽しくなさそうな顔
をした。
オイ、と再びの声。視線だけで応える
と、もう帰れ、と。
ああ、うん。と適当に返事をして握っ
た手の湿る感触をひたすらに無視して
二人に背を向けた。