肺に取り込んだ煙を体のだるさと共に
 吐き出そうと試みる。
 しかし見事に失敗してだるさは依然消
 えず苛立ちが増していく。
 横に顔を向ければ銀色が目に入る。
 彼の魂は侍として強く尊敬していたの
 に。
 己のような者に絆される程に人間らし
 さを帯びたそれは手前勝手な理想を簡
 単に打ち砕いた。己で汚しておきなが
 ら腹を立てるというのは何とも理不尽
 だが、それでもどうにも腹が立つ。
 確かにこの男を愛しているしそれ故に
 セックスだってしたい。だがこの男は
 愛し愛されてもそのような欲とは無縁
 であると訳の分からない決めつけがあ
 った。
 ああ、よく分からなくなってきた。
 かなり短くなった煙草。大きく吸って
 、吐き出す。無駄な思考も一緒に押し
 出そうとするも、やはり失敗に終わる
 。
 枕元に据えられた灰皿に煙草を押し付
 け、腹いせとばかりに力を込めて揉み
 消す。ああ、腹が立つ。
 銀色にもう一度目をやり、シーツを引
 き上げ横になる。
 上手くはいかないもんだと、薄汚い現
 実に目を閉じた。



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