ぐるぐる回る地面に俺が、俺だけが立
 っている。回っても回っても景色は変
 わらない。
 ずっと真っ黒の暗い世界しか、そこに
 はなかった。

 「銀時!」

 名前を呼ばれて聞こえた方へ振り向く
 といつもの生真面目そうな顔でこちら
 を見るヅラがいた。

 「行ってしまうのか」

 眉間の皺がやけにはっきりと見えて少
 し、怯んだ。それでも俺はああと答え
 るとヅラは悲しそうな顔をして、瞬き
 をした次の瞬間消えていた。

 「銀時ィ」

 またも声がして今度は逆方向へ向くと
 そこには聞こえた声の通りに高杉がい
 た。

 「おめぇ、逃げんのかよ。」
 「違う」
 「ふん まあ何でもいいさ。」
 「高杉…」
 「おめぇはここで死ぬんだからなァ!」

 当たれば確実に死ぬような、迷いのな
 い刃が、目前に―――

 がば、と起き上がると息が荒かった。
 驚いてまわりを見回すと更に驚いた。

 「どこ…」

 どこかの家だろうか。六、七畳くらい
 の部屋に今自分が寝ていた布団がひと
 つだけ。
 とりあえず布団から出て枕元にあった
 自分の刀を手にとった。
 誰も来る気配がないのを確認してさっ
 と襖を開けると廊下があった。見るか
 ぎりでもかなりの部屋数だ、ただの民
 家ではない。
 どうしようかと迷っていると不意に後
 方から声がしてぱっと振り向くと見知
 らぬ地味な男が刀を構えていた。

 「誰だ」

 お前こそ誰だと言いたかったが散々走
 ったせいか喉が痛かったのでやめた。
 かわりに俺も抜きこそしないが刀に手
 をかけておいた。

 「何してんだ」

 そうして睨み合っていると地味な男、
 仮にジミーの後ろから瞳孔が開いた男
 が現れた。

 「山崎、刀ァしまえ」
 「え、でも」
 「いいから」
 「…はい」

 瞳孔全開の男は上司か、山崎、という
 らしい地味な男に刀をしまわせ、山崎
 の前に出て俺を上から下までじーっと
 見はじめた。

 「近藤さんが言うんだから、仕方ねぇ
 か…」

 唐突に俺を観察するのをやめると、訳
 のわからないことを呟いて、大きなた
 め息を残して来た方へ戻って行った。
 残された俺と、山崎。山崎は困った顔
 をすると、とりあえずまだ部屋にいて
 くださいとだけ言って土方と同じく廊
 下の向こうへ消えた。



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