今日は父の命日で。だから朝早くから
 江戸のはずれにあるこの墓地までやっ
 て来た。
 ふらりひらりと惜し気もなく降る雪の
 中、饅頭を供えたときいきなり墓石が
 喋った。
 饅頭を食べてもいいかと訊くから、あ
 あいいぞと言えば血やら何やらでどろ
 どろの男が墓石の裏から這い出て徐に
 饅頭を頬張りだした。すぐに全部平ら
 げた男に行く宛がないんだろうと問え
 ばああ、と不思議そうな顔をした。そ
 れを見てじゃあ俺の所に来ないかと誘
 うとえ、と目を見開いたので腕を引い
 て半ば強引に屯所へ連れ帰った。



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