万事屋の泣く姿を初めて見た。いい年
 こいて、なんて思いもしなかった。そ
 んなこと忘れるくらいに奴の涙は悲し
 い音を立てて、地面に吸い込まれた。
 どうして泣いているのかと訊くような
 、そんな野暮な真似はしない。奴には
 奴の背負ったものがあるし、それだけ
 落としたものがある。人の背中なんて
 ものはせいぜい少しの荷物しか背負え
 ない。奴は何でもかんでもすぐに拾っ
 てしまうが、奴だってただの人であり
 、そうである限り奴はその背中に少し
 の荷物しか背負うことができないのだ
 。
 万事屋の輪郭をなぞってまた一つ、奴
 の目から零れた涙がぽたりと悲鳴を上
 げた。奴は拭いもせずにただ重力に任
 せ涙を流した。淋しい泣き顔はいつか
 晴れてくれるだろうか、なんて柄にも
 なく思ってしまった。



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