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東京の街に出てきて何度目の秋だろう。美しくライトアップされた並木道を眺めながら歩く。
ビルや人の多いこの街は、夜が一番綺麗だと思う。
それに何と言っても今夜はハロウィン。初めて見た時は多少戸惑った仮装行列も、今ではお馴染みの光景になった。
明るい水色のワンピースを着たよちよち歩きの女の子が、お母さんに手を引かれて公園の方に向かっている。星のついたステッキを持って、背中には小さな丸い透明の羽。
きっとこれからハロウィンイベントに参加するんだろう。お菓子、いっぱいもらえたらいいね。
可愛らしい光景に和んだのもつかの間、前方の人混みの中に見覚えのある顔を垣間見た気がして胸がざわめく。
とっさにきびすを返し、ハロウィンの飾り付けでごてごてしている雑貨店に飛び込んだ。そこからさっき顔を見た場所へと目を凝らす。
仮装した人々の中に間違いなく見知った顔を見つけた。黒い吸血鬼の服装をしている。
周りにも同じ顔が五人。全員が違う仮装をして、手にはお菓子を持っている。その姿は一見ハロウィンを楽しんでいる一般人のようだけれど。
まさか…こんなところで…?
心臓が早鐘を打つように鳴り始める。
いや、けど…違う。あの人達からは何も感じない。
顔が似ているだけの別人か。
世の中には自分のそっくりさんが三人いると言うけど、こんな偶然があるとは思わなかった。あっちも私には気付いていないようだし。
とりあえず胸を撫で下ろした。雑貨店から出て、少し汗をかいた手のひらを擦り合わせる。
そう、まさかこんなところにいるわけがない。
かの六人を視界に入れないように道を急いだ。早く家に入って大人しくしていよう。私は残された時間を平穏に過ごそうと決めたのだから。
賑わう街の中心から遠ざかり、煌々と輝く月を背に人気のない通りへ入る。この住宅の少ないビルの隙間のような場所に私の家はある。
安い音のする階段を上り、鍵を開け部屋に入ると、静寂と闇が私を迎えてくれる。電気をつけずに正面のベランダに通じる窓を開ければ、ビルとビルの間の月。その下には仮装をして集う人々が小さく見える。
冷蔵庫から残りわずかな最後のボトルを取り出し、ワイングラスに注ぎきってからベランダに出た。
こうして一人きりで過ごす夜に恨みを募らせたこともあったけど、今日で全て清算されると思えばまだ…
頭を振って手すりにもたれかける。
よりにもよって何で今日、奴のそっくりさんに出会ってしまうのか。しょっちゅう悪夢に出てくるあの顔は、忘れようったって忘れられない。

そもそもの元凶である奴との出会いは、私が十代の時だった。
若くして結婚が当たり前だった私の故郷では、友人達はみな十代で嫁いでいった。私も結婚を考えなければならない年齢になり、周りから見合いの話が舞い込み出した頃、ひょんなことから一人の男と知り合った。
男の名前はオソマトゥ・マツノフ。
今思い出してもおぞましい記憶だけれど、当時の私は真剣に奴に恋していた。歳上のように見えて無邪気な子供っぽい一面があるところや、人を明るい気分にさせる雰囲気など…地に足の着いていない理由であることは認める。
とにかく二人の将来まで夢見ていた私にとって、ある夜唐突に明かされた奴の正体は衝撃だった。そう、うかつにも私はそれまで奴が吸血鬼だと気付かなかったのだ。
人気のない暗い場所へ連れ込まれた私は、奴の軽い言葉に乗せられ目を閉じた隙に首元に牙を立てられた。
何が起きたのか分からず闇雲に抵抗し助けを求めた私は、幸運にも通りがかったヴァンパイアハンターに救われた。
しかし奴はすんでのところで逃げおおせてしまったらしい。気を失っていた私は、ハンターの家で目を覚ました。
その時、この体がもう人間のものではなくなっていることを本能で悟ったのだった。
吸血鬼に牙を立てられた者はまるで意思がなくなり、主人となった吸血鬼の指示にしか従わなくなるという。
ただ、私は極めて特殊な例だったようだ。奴に噛み付かれた時間が短かったからなのかどうなのかは不明だけれど、その時から私は半分人間、半分吸血鬼の化け物になった。
まず、普通の食事以外に血も摂取しなければならなくなった。もちろん人に噛み付くなんてできないので、とあるルートから輸血用の血をもらって過ごしてきた。
それから、日光や銀が苦手になった。死ぬことはないけれど、体の内側からもひどい日焼けを負ったようなダメージを感じてしまう。
最後に、外見の成長が止まり、寿命が人間の何倍にもなった。
一番辛かったのはこれだ。両親も友達も人としての一生をまっとうしていくのに、私はどんどん一人になっていく。
幸い、私を助けてくれたハンターの一族が代々ずっと私の面倒を見てくれてきた。だから完全に孤独になることはなかったけれど、人の道を外れてしまったことはやっぱり寂しい。それを紛らすように、ハンター一族に混じって吸血鬼狩りを行ったこともあった。
結局奴は仕留められず、一族の現当主である友人に「残りの人生を人として楽しみなさいよ」と言われ流れ着いたのがこの東京の地。制約は多いけれど、とても楽しく過ごさせてもらった。

最後の月を見上げながら、グラスの血を飲み干す。
今日でこの地ともお別れだ。
これも人でなくなって得た特殊能力なのか、だんだんと自分の死期が近付いてきているのを感じていた。多分今日、私はようやく永遠の眠りにつける。
友人にお別れの手紙を出したり東京での思い出の地を巡ったりして、心穏やかに一人眠るつもりだった。
なのに…そんな日に奴と同じ顔の人間に出会うなんて、何の因果だろう。
まだ奴に未練があるから?
バカな。
私から血を奪おうとしたということは、私が死んでもいいと考えていたということだ。
私の純情な気持ちを利用して…許せない。
苦々しく空のグラスを見つめていると、突然頭の中に電流が走った。第六感とも言うべき、他人には分からない感覚。
久しく忘れていたこの感じは…
部屋に飛び込み窓をぴったりと閉め、カーテンに隠れて外を窺う。
けれど、こんなことをしてもきっと無駄だ。強制的に結ばれたある種の繋がりを通じて、あちらにも私の存在が気付かれたはず。
吸血鬼もどきの私は、奴が近くにいる時にこんな風に直感が働く。狩りに参加していた頃はそれが役に立ったのだけれど、今は厄介な体質でしかない。
息を詰めて様子を窺っていると、遠くの空から鳥のような影が近付いてきた。
コウモリだ。
どうして、どうしてこんなところに…!
動揺する私をよそに、コウモリは真っ直ぐ私の隠れる窓の前までやって来て、あっという間に姿を変えた。

「杏里ちゃーん、いるんだろ〜?」

へらへらした能天気な調子は相変わらずだ。
忌々しく舌打ちをしながら、顔だけをカーテンから出した。昔と何も変わらない、にやついた男の姿が窓ガラス越しに宙に浮いて見える。

「うわー久しぶりだねぇ。相変わらず可愛いまま」
「何か用?」
「そんな邪険にすんなよ。せっかく気配察知して会いに来たのにさぁ」

しょんぼりした様子でベランダの手すりに腰を下ろす。

「てか別に杏里ちゃんをストーカーしてきたわけじゃないよ?偶然偶然。トドマトゥが都会行きたいっつーからみんなで引っ越してきたの」
「東京に?」
「そう!いやぁなかなかいいとこだねー、可愛い女の子いっぱいいるし」
「じゃあその子達のとこに行けばいいでしょ」
「まあまあ嫉妬すんなって」
「誰が…!」

手の中のグラスが粉々になった。人でなくなって嫌なことの一つは、こういう超人的な力を持ってしまったことだ。
怒りを抑えて窓の外の悪魔を睨む。

「ね、そんな顔しないで。俺のこと嫌いになっちゃった?」
「大っ嫌い」
「悲しーなぁ…あんなに好きだって言ってくれたのに」
「昔の話でしょ」
「俺は今も好きだよ」
「どの口が言ってるの?私を化け物にしたくせに」
「え?」

きょとんとした顔が憎らしい。しかもその後笑い始めた。

「杏里ちゃんなんか全然化け物に見えねーじゃん!俺らみたいに翼もないし牙もねーし何より可愛いし」
「そういうこと言ってるんじゃ…!」
「すげーいい見た目キープしててうらやましいよー」
「…この…っ!」

窓ガラスがびりびりと揺れる。
だめだめ、抑えなければ…挑発に乗ったらきっと奴の思うつぼだ。
呼吸を整えて理性を優位に立たせる。どうせもうすぐこの男ともお別れだ。体が徐々に灰になっていくような、そんな感覚が強くなってきている。

「ねー杏里ちゃん入れてよ、呼ばれないと入れないって知ってるだろ?」
「絶対に嫌」
「はぁ…何でこうなっちゃったかなぁ…」

足を組んで物憂げにため息をつく男に、苛つきながらも言葉を返す。

「全部あなたのせいでしょ」
「何で?」
「吸血鬼ってこと、黙ってた。最初から言ってくれれば近付かなかったのに」
「あ、それで怒ってんの?んー、まあ確かにそれはごめん」
「…」
「だって言ったら杏里ちゃん逃げちゃうと思ってさ」
「…何で私がこんな目に…」

思わず弱気な台詞を吐いてしまった。静かに息を引き取りたかったのに、こいつのせいでめちゃくちゃだ。最後の日までかき乱されなくちゃいけないなんて。
男は相変わらず余裕げな態度で「ごめんごめん」と言った。

「うん、まあ…杏里ちゃんだからこうなったってのはあるな」
「…」
「杏里ちゃんじゃなかったらすぐ死んでたし、だから杏里ちゃんが長いこと辛い思いしたのも」
「…ちょっと待って!」

聞き捨てならない台詞が聞こえた。
私じゃなかったらすぐ死んでた?

「どういうこと…?私じゃなかったら死んでたって、どういう意味?」
「え?ほら杏里ちゃんってレアケースの人間だろ?だから血吸っても死なないしさ」
「…なっ…!」

事もなげに言ってのける男に絶句する。
ということは…

「……私を、殺そうとしたんじゃないの?」
「何でだよ!だってあの時結婚しようねっつったじゃん!だから杏里ちゃんも吸血鬼にさせようとしたのに、何勘違いしたのか杏里ちゃんずっと俺に怒ってんだもん」
「…私が、血を吸われて死なない人間だって初めから分かってたの?」
「うん。だって俺長男だし。これ分かんの一族ん中で俺だけなんだぜ!すごくね?」

得意そうに言い放った男に、名付けようのないもやもやとした感情がわき上がってくる。
殺そうとはしていなかった。むしろ結婚の話を彼なりに考えていてくれていた…それは、嬉しい、のかもしれない。
だからって本人の了承なしに勝手に吸血鬼化させるって…!

「なんか知らないけど杏里ちゃんハンター側に回ってるし、気付いたらいなくなっちゃってたし、俺寂しかったな〜」
「だ、誰だって殺されそうになったら愛想尽かすじゃない!」
「だから違うって!人間だとすぐ死んじゃうじゃん!杏里ちゃんならレアだし仲間になってくれればずっと一緒にいれるって思うじゃん!」
「だからって私に確認も取らずに勝手に吸血鬼にさせようとする普通!?」
「え〜結婚の約束してたしいいかなって」

どうやら勘違いが解けてもなお、私はこの男のいい加減さが我慢ならないらしい。今さらあの頃のような関係に戻ろうとは思えなかった。それに、最後の時が迫ってきている。
だけど、真実を聞けたのは良かったのかもしれない。多少は胸の奥でくすぶっていたものもすっきりした。
カーテンをぎゅっと握っていた手を離し、窓を少し開ける。
彼は顔を無邪気に綻ばせた。この顔に惹かれて、隣で見ていたくて、一緒にいたんだっけ。

「ようやくガラス越しじゃない杏里ちゃんが見れた」
「最後くらいいいかと思って」
「待ってよ、せっかく会えたのにまたどっか行くの?」
「そう。天国か地獄かは分からないけど」
「………は?」

彼の顔が、ここに来て初めて強張った。

「何言ってんの杏里ちゃん、吸血鬼は不死身だよ?」
「私は吸血鬼じゃない。半分人間の吸血鬼もどきなの」
「……………んだよそれ……聞いてないんだけど」
「あなた達と違って寿命があるの。今日でやっと休める…」

途端にガラス窓がガタガタと鳴り出し、空気がぴんと張り詰めたものに変わった。

「入れてよ、杏里ちゃん」

うって変わって無表情になった彼の目が赤く染まっていく。
赤い目の彼を見るのは初めてではないけれど、こんな顔をするのは見たことがない。

「…嫌」

開いた窓から一歩下がると、肌が切れそうなほどさらに空気が鋭くなっていくのを感じた。

「私、もう終わりにしたいの。ちゃんと眠りにつきたい」
「やだね」
「あなたが決めることじゃないでしょ?」

そう口にした瞬間、足に力が入らなくなってがくりと地面に座り込んだ。
手先に目をやれば、うっすら灰色に染まってきている。死ぬ時は吸血鬼みたいになるのか。それじゃ、私の行くところは地獄かもしれない。

「杏里ちゃん」
「そろそろかも」
「入れてってば」
「…」
「入れろって」

部屋の中が暗くなる。窓からの景色が全て、黒い翼で覆われていた。
彼が翼を振りかぶったと同時に何をしようとしているのか察した私はカーテンを掴んだ。
一瞬の後、派手な音がして窓が枠だけになる。ガラスの破片が部屋の中に飛び散り、その場に留まっていられないほどの強風が飛び込んでくる。

「ちょっと…やめてよ!」

私の声も風に千切れて自分の耳にも届かない。
必死で掴んでいたカーテンがとうとうレールから外れ、一緒に部屋の奥に吹き飛ばされた。
声を出す間もなくガン、と思い切り背中を打ち付ける。後ろは玄関。
ドアごと私を外へ吹き飛ばす気か。なんて強引な…
爆風から顔だけでも何とか守りながら、こんなに力の差を見せつけられたのは初めてだと思った。彼の本気がこれなら、私はいつも怪我をしない程度にあしらわれていたことになる。
耐久性の低いドアはミシミシと音を立て外れかけている。体勢を立て直そうとしたが無駄だった。威勢のいい音と共に、私は瓦礫と外に放り出された。
宙に浮いたと思ったのも一瞬で、すぐにがっちりと捕らえられる。死に行く体はあまり抵抗ができず抱き寄せられるままになった。
首元に顔が押し付けられる。私が人でなくなった時と同じように。

「俺のこと一人にしないで」

泣いているような囁き声がして、首に瞬間的な痛みが走った。自分の血が吸い上げられていく感覚がする。
同時に、見てもいないのに自分の目が赤くなっていくのが分かった。
彼の口が離れるやいなや、私は彼の首筋に噛み付いた。
既に人間ではなくなった自分の本能に従ったわけではない。まだ私がハンターの仲間入りをしていた頃に聞いた話を思い出したからだ。
吸血鬼と血を吸われた者には強制的に主従関係が結ばれる。しかし、それを解消する方法が二つある。一つは主人の吸血鬼を殺すこと。もう一つは自らの意志で主人の血を飲むこと。
吸血鬼になってまでこの男の奔放さに振り回されるのはごめんだ。直ちにそんな判断ができたのは、彼の言う通り私がレアケースだからなんだろうか。
ともかくも彼の血を少しすすっただけで、吸血鬼もどきだった時分から感じていた妙な繋がりがぷっつり途切れたような気がした。
すぐさま彼から離れて距離を取る。
粉々になってしまった玄関先に降り立つと、何が起きたのか分からないような表情の彼が見えた。

「今俺の血飲んだ?」
「そうだけど」
「…あーそっかぁ……ま、いいか。そっちのが面白いし」

ほぼ永久的な命を得ている彼は、物事を面白いか面白くないかで判断している節がある。私もいずれはそうなってしまうんだろうか。
そう考えて深いため息をついた。
何てこと…あんなに忌み嫌っていた吸血鬼に自分がなってしまった。

「ねえ」
「…何」
「俺の血どうだった?おいしかった?」
「…まあまあ…飲みやすくはあったけど」
「そっか…そっかー!」

私と反対に表情を明るくさせたこの男が本当に忌々しい。

「俺はねぇ、杏里ちゃんの血の味が一番好きなんだよ」
「あっそう…」
「ふーん、まあまあかぁ、ふーん」

どうでもいい話で何でここまで楽しそうにできるのか意味が分からない。
私は目下の問題と向き合わなければならない。吸血鬼となってしまったこの身の振り方を考えなければ。
いっそ、友人に頼んで葬ってもらおうか…

「もう死ぬなんて考えんなよ」

私の考えを邪魔するように口を挟む彼をきっと睨む。

「いっつも勝手なことばかり言わないで」
「何でそんな死にたいの?永遠に遊べる命が手に入って嬉しくね?」
「私は元人間なの!家族も友達もみんな先に死んでいく辛さが分かる!?」
「分かるよ。俺杏里ちゃん死んだらやだもん」

ぐ、と言葉に詰まってしまった。
そうだ、そもそもこの男は私と一緒にいるために私を吸血鬼にさせようとしたんだった。その強引なやり方はどうかと思うけれど、根っこのところは一応純粋な気持ちと言えなくもないのかもしれない。

「…それでも、あなたには兄弟がいるでしょ」
「えー!?俺やだよ野郎ばっかでずっとつるんでんの!俺は永遠に一緒に遊べる女の子がほしいの」
「そんな理由で…」
「誰でもいいってわけじゃないからね?先言っとくけど」

真剣な顔をしていた彼は、ふっと表情を崩した。

「いやーこれで俺たちやっっっと結婚できるな!」
「…は?」
「いやいやは?じゃないよ、元々そういう約束だっただろ?」
「何百年前の話よ、もうとっくに反古になってるから」
「嘘だろ!?俺たちあんなに愛し合ってたのに!?」
「気持ち悪いこと言わないで」
「事実じゃねーか!ねー杏里ちゃん結婚してよう、俺あの時よりは大人になったよ!?たぶん!」

喚く声に耳を塞いですっかり廃墟のようになってしまった部屋に入る。
土地ごと買い上げた場所だからまだいいようなものの…だんだん怒りが込み上げてきた。
瓦礫の中から、ハンター時代に使っていた銀製のナイフを拾い上げた。柄は木製なので吸血鬼になった今でも触ることができる。
それを思い切り彼に向かって投げつけた。

「ギャーッ!待って杏里ちゃん!せめて最後に好きって言っ……」

あっという間にさらさらと灰になったそれを集めて袋の中に入れ、彼の兄弟の集まっている気配がしたとある建物の前に放置してきた。日の当たるだろう場所に置かなかったのは…そう、昔のよしみだ。それだけ。
そんなことより一番の問題がある。

「トトコに何て言おう…!」

ハンターであり友人のトトコ・フィッシャー。もう別れの手紙を出してしまったのに、やっぱり吸血鬼になって戻ってきましたなんて間抜けすぎる。
これも全部あいつのせい。この命が尽きるまで一生恨んでやる。



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